環境と生物多様性を守るためのグリホサート系除草剤の役割

目次

はじめに

人口の増加に伴い、農業界では、環境への影響を抑えながら健康な作物を育てるための取り組みが続けられています。これは、土地や天然資源の使用量を減らし、生物多様性を保護し、温室効果ガスの排出量を削減し、土壌が豊かな栄養分を維持できるようにすることを意味します。以下、グリホサート系除草剤を環境保全の側面から説明します。(参考:グリホサートとは

 

ミツバチの保護と生物多様性の保全

ミツバチをはじめとする昆虫は、多くの農作物の生産に欠かせない役割を果たしています。なぜなら、多くの作物は風で受粉するのではなく、受粉昆虫に大きく依存しているからです。アーモンドはほとんどミツバチの受粉に頼っていますし、ミツバチがいなければ、ブルーベリーやカボチャ、スイカなどの果物の収穫量は格段に減ってしまうでしょう。だからこそ、農家をはじめとする農業界では、さまざまなパートナーシップや取り組みを通じて、ミツバチの保護に努めているのです。

意外に思われるかもしれませんが、世界のミツバチの数は、1960年代初頭から65%も増加しています。

ミツバチは、病気や飼料、バルロア菌、栄養不足、天候など、さまざまな問題に直面しています。また、ミツバチは環境にとって非常に重要な存在であるため、グリホサート系除草剤が重要な受粉媒介者やその他の有益な節足動物に害を与えるのではないかという議論がなされています。

グリホサート系除草剤はミツバチへの潜在的な毒性を評価するため、実験室および野外で広範囲な試験が行われてきました。例えば、トンプソンら(2014)による包括的な研究では、グリホサートで処理したミツバチのコロニーでは、環境的に現実的な暴露量を超えるレベルであっても、成虫の生存率やハチの子の生存率や発育に悪影響を及ぼさないことが分かっています。

また、欧州食品安全機関(EFSA)米国環境保護庁(EPA)などの規制当局は、グリホサートなどの作物保護製品を環境に対して安全に使用できるよう、包括的な評価を行っています。このプロセスの一環として、規制当局はミツバチを含む非標的生物への影響の可能性を特に評価しています。規制当局は、環境に不合理なリスクをもたらさない製品のみを承認します。

また、研究者たちは、グリホサートを使用することで、農家はより少ない土地を使用しながら、より生産性の高い収穫を確保できることを発見しました。これは、雑草が作物と栄養分、水、日光、スペースをめぐって競争するため、競争が減ることによるものです。作物を栽培するために必要な土地の量を減らすことで、農家はミツバチをはじめとする昆虫、鳥、カエル、有益な生物が繁栄するために必要な重要な生息地や餌場を確保することができます。

グリホサートが野生動物に与える潜在的な影響を調べるために、広範な試験が行われています。これらの試験は、政府によるグリホサートの安全性評価に不可欠な役割を果たしており、これらを総合すると、グリホサートの承認された用途が動物性野生生物の健康を脅かすものではないことが証明されます。

 

グリホサート系除草剤の環境面のメリット

グリホサート系除草剤には、環境を保護しながら、豊かな収穫を得るという環境面におけるメリットがあります。

耕すということは、何世代にもわたって雑草を駆除するために行われてきました。耕起は雑草の駆除には効果的ですが、土壌に蓄積された温室効果ガスを放出したり、浸食を引き起こしたりします。これらの現象は、土壌から栄養分を奪い、土壌が水を吸収しにくくなり、流出の原因となります。グリホサート系除草剤を正確に散布することで、農家は土壌をそのまま残すことができ、持続可能な未来に貢献する環境面でのメリットを実感することができます。

  • 土壌肥沃度の向上

グリホサートは、土壌の肥沃度を守るための非常に有用なツールとなっています。グリホサートの最大の利点のひとつは、耕起(またはプラウイング)の必要性を減らすことで、より健全な土壌を育むことができることです。グリホサート系除草剤を使用することで、農家は前年の作物残渣や有機物を土壌の上に残したまま土壌を残すことができます。これにより、土壌中の栄養分や微生物(植物の成長を助ける小さなバクテリア)の量が大幅に増加します。植物の根が育つ環境を整えるだけでなく、不耕起栽培や減耕起栽培を行うことで、土壌浸食が60〜90%も減少することがわかっています。

  • CO2排出量の削減

気候変動は、大気中に蓄積された二酸化炭素などの温室効果ガスが太陽の熱を吸収することによって引き起こされますが、人間がその原因となっています。農業では、耕作、肥料、燃料などの道具の使用により、温室効果ガスが排出されます。しかし、他の産業とは異なり、農業は排出する温室効果ガスと同じかそれ以上の温室効果ガスを取り除くことができるユニークな産業です。必要なのは、健康な作物を作るための適切なツールとソリューションです。しかし、農業は他の産業とは異なり、排出する温室効果ガスと同じかそれ以上の温室効果ガスを取り除くことができます。2014年だけでも、耕起を減らすことで、約200万台の自動車を道路から排除するのに相当する二酸化炭素排出量を削減することができました。

  • 水源の保護

水の安全を確保し、この貴重な資源を保護するためには、不耕起栽培や耕起量を減らすことが重要です。農家が耕さないことで、土壌の保水力と水分量を高めることができます。地面に水分があれば、流出が減り、作物に必要な水が増えるため、灌漑の必要性が減ります。グリホサートは、土壌に強く結合し、地下水に溶出しにくいというユニークな性質を持っています。また、時間の経過とともに、二酸化炭素、窒素、リン酸などの自然界に存在する物質に分解されます。

 

グリホサートとはー土壌肥沃度・CO2削減・水源の保護
グリホサートとはー土壌肥沃度・CO2削減・水源の保護

(参考:グリホサート 安全性に関する情報、グリホサート イソプロピルアミン塩グリホサート カリウム塩など成分に関する情報、グリホサート 検査結果に関する情報)

 

最後に

グリホサート 安全性や環境に対する影響などが懸念されがちですが、各国の研究機関や国際機関が環境に対する影響を研究し、自然の保全のために尽くしてきています。また、「除草剤」が環境保全にメリットがあるということもわかりました。日本において、グリホサートの環境汚染などに関する不安を煽るような情報もありますが、科学的に研究されている情報を一人ひとりが選択できるようにと願うばかりです。

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