農協ってどんな組織?
1900年(明治33)の産業組合法に準拠した産業組合として、農業協同組合の歴史が始まりました。産業組合は1933年から二次にわたる拡充運動の結果、ほぼ全国的な普及を示しました。しかし、戦時国家体制への移行に伴う農業団体法(1943年)によって、他の農業諸団体とともに農業会という統制団体へ統合されました。
1945年、第二次世界大戦の終結に伴い、GHQ(連合国最高司令官総司令部)は同年末、日本国政府に対しいわゆる農民解放指令を発し、半封建的な農地制度を払拭することを指示しました。またGHQはそのなかで、民主的な農業協同組合の設立も求めました。しかし法案策定の過程で農協の性格について、農林省とGHQとの間で意見が対立し、素案をめぐっては実に八度にわたって交渉が行われたのです。しかし結果的には後者の意向に沿い、協同組合原則を忠実に体現した農業協同組合法が成立、1947年11月19日に公布されました。
農業を始めたばかりの人にとって農協は心強い味方
個人が農協の組合員になるには、一定の条件をクリアした上で、1口以上の出資をする必要があります。JAによって1口あたりの出資額は500円~1万円と差があります。そこで、組合員のメリットについてご説明します。
- 出資配当がもらえる
毎年行われる総会により、正・准問わず組合員は出資額に応じて配当金が分配されます。出資配当金からは所得税等が20%源泉徴収されますが、配当所得となるため、確定申告すれば還付される可能性があります。
- 農協からの融資を受けることができる
JAから融資を受ける個人または法人は、原則として組合員である必要があります。つまり組合員でないとローンを組むことができません。
- 農協の各種施設を利用できる
農協の資産は組合員の共用資産です。准組合員も農業施設を使うことができます。
- 給油価格
農協によっては、給油所で組合員価格が適用されることがあります。地域最安値かそれに近いレベルというのは、意外と知られていません。
- 広報誌の発行、組合員組織やサークル活動
JAが定期的に発行する情報誌を無料で受け取ることができます。また、組合員限定の組織がに参加できます。
一方で農業慣れしている人には、独自の農業展開できないというデメリットも
農協独特のしがらみが苦手な方は、個別に出荷組合を立ち上げて活動したりもしています。では、農協加入のデメリットとはなんでしょうか?
- 自分のブランド野菜としての個性を売り出せない
1つ目は、自分のブランド野菜ではなくなること。農協出荷をすると、それら全てが「農協による農産物」というカテゴリとなってしまいます。
- 野菜価格の決定権がない
2つ目は、野菜の価格を自分で決められないことです。農協出荷の場合、野菜の価格は相場や契約により決められ、農家側には価格決定権がありません。これが嫌であれば、独自販路の開拓が必要となります。
- 手数料が高い
3つ目は、様々な名目にかかる手数料が高いことです。ただし、これにより自前で労働力を確保する手間が省けますので、これをメリットと感じる会員ももちろんいます。農協が販売から出荷まで面倒を見てくれるため、本来の農業に集中できるという考え方もできます。
- 自分の思った通りに戦略を取れない
4つ目は、部会単位での出荷戦略となるため、自分が思ったことが全て実現できるわけではないところです。農協出荷は、組織(=部会)単位での出荷戦略を取ることが必要とされるのです。
理想的な農家とは?農協の力を借りつつも、自分の農業を管理することが大切。
農協のサービスは新規就農者にとって魅力的なものが揃っています。生産者の部会に入ると、栽培講習会などが受講可能となり、他の農家さんとコネができるので、情報収集も楽になります。必要な資材も、共同購入するため価格が抑えられます。農協出荷した野菜は、自分に代わって農協が販売してくれるのです。
農協は大組織であるため、自由が効かない部分もありますが、その分他社よりも頻繁にコミュケーションが取れる体制にあります。また、肥料・農薬・資材のスペシャリストが沢山いて頼れますし、作物の試験場も持っていますので、栽培技術指導などもできます。
特に新規就農農家は、農協の強みをうまく利用し、安定した収入を得ながら、徐々に経営感覚を磨いていくことが重要でしょう。
農協のサービスを上手に利用しよう
作物の栽培以外のわずらわしいことはすべて農協が請け負ってくれるので、生産だけに集中できるところが、新規就農者に特に向いている出荷形態です。農閑期に行われる講習会などでスキルアップし、独自販路の開拓をしていけばさらに多くの収入が見込めます。