ニュースでも話題に。相次ぐ食品の値上げ
食品の値上げは春から、というニュースを聞いたことはありますか?実際、いつから食品の値上げがあるのだろうと思っている方もいるかもしれません。実はもう始まっていて、5月〜6月にも多くの食品が値上がりします。夏以降も、様々な食品が続々と値上がり予定です。
例えば、人気の駄菓子「うまい棒」が、税抜き10円から20円に。昭和54年の発売以来、初めての値上げで大きなニュースになりました。回転寿司チェーン「スシロー」も、1皿の最低価格の値上げを発表。ハウス食品も「バーモントカレー」など479品目を約5~10%値上げすることを発表しました。
食品以外の分野でも、値上げの動きがあります。ソニーグループは家電製品の出荷価格を引き上げました。日本航空はエコノミークラスの普通運賃を値上げ。近畿日本鉄道は、27年間据え置きだった運賃の改定を国土交通省に申請中です。電気代や高速料金も値上がりしました。
値上げラッシュは止まるどころか、今後、加速していく可能性もあります。
なぜ食品の値上げラッシュが続くのか
世帯ごとに、年間5~8万円の支出増になると言われる値上げラッシュ。そもそもなぜ値上げラッシュは始まったのでしょうか?物価上昇には、様々な要因が絡み合っています。世界的な原材料価格の上昇に加え、急速な円安も要因になっているでしょう。
現在、最も顕著な価格上昇を見せるのが、輸入小麦です。この1年半で5割近くの値上がりがありました。主な原因は北米での不作ですが、コロナ禍のためコンテナ輸送の停滞があり、輸送費が値上がりしたこともあるでしょう。このように原材料だけでなく、輸送費自体が割高になっていることも値上げラッシュの要因になっています。
小麦の価格が上昇したことで、日本国内ではパンの値上がりが顕著です。そのため、「輸入品より国産品」「パンより米を」という対策が勧められています。パンに比べて米の価格はむしろ下がっているため、小麦製品ではなく米を主食にするのが私たちにできる対策と言えるでしょう。
また、ロシアによるウクライナ侵攻の影響も今後出て来る可能性があります。例えば歯の治療で、銀歯の価格が数十円~数百円値上がりしました。これは、銀歯の材料となるパラジウムという金属の価格が急上昇したためです。パラジウムはロシアが世界有数の産出国で、全体のおよそ40%を占めています。ウクライナ情勢の緊迫化により、パラジウムの価格は約40%上昇しました。
実は、円安とウクライナ侵攻の影響は、まだこれまでの値上げには含まれていないと言われています。そのため今後、より深刻な影響が出て来る可能性があるでしょう。
ロシアのウクライナ侵攻により、世界食糧危機は起こるか
「ロシアのウクライナ侵攻により、世界に食糧危機が起こるかもしれない」。そんな噂が出回っています。その噂が出始めた原因の1つは、小麦の国際価格でしょう。ロシアは世界第1位の、ウクライナは世界5位の小麦の輸出国です。両国で全世界の小麦輸出量の3割を占めます。この小麦の供給不足を懸念し、国際価格が上昇しました。
実際に侵攻により農地が荒らされ、黒海の港は閉鎖されました。そのため、倉庫に保管されていた小麦を運び出すことができません。両国に小麦の輸入を依存しているアフリカや中東諸国は、ダイレクトに影響を受けています。
また、ロシアの通貨であるルーブル安により、ロシア国内で食料価格が上昇しています。そのため昨年12月、ロシアは小麦に輸出関税をかけることにしました。小麦の国外流出を防ぐためです。このことも、小麦の国際価格に影響を与えています。
このように、ウクライナ侵攻の影響は世界中で徐々に出始めているようです。価格の高騰により貧困国では食糧が変えなくなり、餓死者も出る可能性があります。2008年の食糧危機では、各地で暴動が起きました。
しかし食糧危機に関しては、ウクライナ侵攻だけが要因ではないでしょう。もともと地球温暖化による異常気象で、穀物の生産が危ぶまれていました。主食の穀物生産量が落ちると、インフレ懸念により輸出を制限する国も出て来ます。ただ、ウクライナ侵攻の影響は確実にあり、今後世界中に広まっていくでしょう。
農薬や除草剤の安易な禁止が持続可能な農業を脅かす
世界中で危ぶまれる食糧危機。これを回避するためには、食物の効率的な生産が鍵でしょう。昨今、農薬や除草剤は風評被害に見舞われています。科学的根拠のない、こうした言説を野放しにしておくと、それこそ食糧危機を回避できないかもしれません。
なぜなら、農薬や除草剤を適切に使っていくことにより、安定した生産量を確保できるからです。すでに始まっていると言われる食糧危機を乗り越えるため、そして持続可能な農業を実現するために、農薬や除草剤は必要なものなのです。