東京で農業?「都市近郊農業」の特徴とは
都会のイメージが強い東京都ですが、東京都でも農業が行われています。都市近郊に近い地域で行う農業の事を「都市近郊農業」と呼び、市場や大量消費地に近い都市の近くで農作物を生産する為、物流コストを抑え、消費者に新鮮で安全な農作物を供給できるのが強みです。
都市近郊農業の範囲は、中心となる都市から1時間~1時間半ほどで行き来できるエリアを指し、東京23区を中心で考えた場合、茨城県牛久市・埼玉県所沢市・千葉県君津市・神奈川県小田原市辺りまでが範囲となります。
都市近郊農業は農業だけでなく他の仕事も行っている兼業農家が多く、地産地消しやすい環境の為、販売ルートが多様化している事も特徴の一つです。農作物の約8割が自宅での庭先販売や無人販売機、飲食店・医療福祉施設への直販などで販売されており、体験農園や朝市などの販売事例もあるなど、地域内で販売されている事が多いです。全国の1割弱を占める都市近郊農業は、都市の重要な産業と考えて良いでしょう。
東京の特産品を知っていますか?
では東京の特産品にはどんな物があるのでしょうか。東京の西側、多摩地域をメインに、地域の特徴等を活かした様々な農作物が生産されています。
<西多摩地区(奥多摩町・青梅市・あきる野市など)>
農業振興地の指定もある事から、農地が多く残ってることや、山間地の特徴を活かした農作物が特徴です。
山間地:ジャガイモ・そば・ワサビ・シクラメンなど
平野部:大根・トウモロコシ・シクラメンなど
<南多摩地区(八王子市・町田市・多摩市など)>
古くから畜産が盛んです。東京特産の果樹栽培が盛んである事も特徴です。
酪農・ナシ・ほうれん草・花き・イチゴ・トマトなど
<北多摩地区(福生・立川・東久留米・三鷹・調布など)>
比較的大きな農地があり、生産緑地も多い事から、東京農業の中核である地域です。
ホウレンソウ・ニンジン・ブロッコリー・ウド・ナシ・キウイ・花き・植木など
その他、より都市部に近い地域では古くから江戸東京野菜として愛されてきた野菜をはじめ、都市に近い利点を活かした作物の生産や、島では温暖な気候を活かした果物なども生産されています。
防災として役立つ都心の農地
都市部に農地がある事が防災に繋がる、というのはどういう事なのでしょうか。災害時、農地が担うと予想される防災機能は複数あります。農作物や井戸水が手に入りやすいなど、食料や水の確保としての機能はもちろん、避難場所や炊き出し・物資供給を行う災害支援拠点としての「場所」の機能が挙げられます。建築物が倒壊した場合、仮設住宅や復旧用の資材置き場などに使う事も可能です。
また、建築物が密集している都市部では、農地があること自体が火災の延焼を防ぐという機能も持ちます。江戸時代の火消しが延焼を防ぐ為に周囲の家を壊した事と同じ効果。
逆に、水害時には雨水を貯め、洪水の発生・拡大化を防ぐ効果も期待されます。都市部は雨水が浸透しづらい舗装された地面が多く、水分を貯めやすい土壌があるという事が大変重要です。
東京ならではの先進的な農業
都心で農業ができる利点を活かして、昼はIT企業で働き、週末は農業を楽しむというライフスタイルを取り入れる人も増えてきています。IT技術を駆使した栽培など、東京ならではの先進的な農業が見られる事も東京農業の特徴です。
東京メトロでは2014年12月にLEDを利用した人工光型植物工場を開設しました。江戸川区を通る東西線の高架下に作られており、「とうきょうサラダ」というブランド名で都心のホテルやレストランに販売されています。
鮮度が高いのはもちろんのこと、水耕栽培で衛生的な環境で作られている為、異物混入の心配がほとんどありません。天候にも左右されない点も大きく、年間を通して安定した安全な品質の野菜提供が可能です。
その他にも、老舗の文房具専門店の銀座・伊東屋では、2015年に12階建ての建物を建築し、その11階にはレタスやルッコラなど数種類の野菜を水耕栽培できる工場が設置されています。12階のレストランでは採れたての野菜を楽しむことができます。
その他にも、六本木ヒルズの屋上にある水田では毎年40~50キロのお米が収穫されているというのも驚きですね。
東京農業を要チェック!
東京で農業というイメージは一見つきづらいですが、調べてみるとなるほど納得の利点ばかりですね。LEDを使用した水耕栽培もこれから更に増えて行くことが予想され、東京農業からますます目が離せません。