現代の農業で必要とされる経営力とは
現代農業において大切なこととは何でしょうか。今の時代は、農業技術を向上させ、よりよい商品を出荷するだけでは不十分になりつつあります。農業者の高齢化によるさらなる就農率の低下が避けられない一方、これからの農業経営ではますます推進されるグローバル化や消費者ニーズの細分化、環境問題や地域機能の低下などにも対応する必要があります。その中で持続的な農業経営を行うためには、広範な経営的知識が必要となります。
農業従事者が減少する一方で、農家1戸あたりの営農面積は増加しています。また、農作業の生産性を高めて生き残っていくためには、ICTやロボット技術などの積極的な導入が必要です。近年は、農地集約や法人化による営農規模の拡大など農業の経営環境が大きく変化しています。またスマート農業の導入により、少人数で高収益を実現できるチャンスも訪れました。営農規模の拡大やスマート農業の推進に対応しながら持続的に農業経営を続けるためには、積極的な情報収集が必要不可欠であることを認識しなければいけません。新技術の導入や農家のブランディング、6次産業化による収益体質の強化も、農家の生き残りの重要なキーポイントとなるでしょう。
経営戦略例)農作物の「プロダクトアウト」と「マーケットイン」とは
6次産業化に重要なのは、「プロダクト・アウト」ではなく「マーケット・イン」である、といった話を聞いたことがある方はいるのではないでしょうか。「プロダクト・アウト」と「マーケット・イン」というのはマーケティング用語で、前者は高度経済成長期など、増加する人口のためにモノが不足し、作れば売れた時代の考え方であるとされています。農業においては、農協が集約的に農産物を集荷し、市場を基点に全国へ農産物を流通させる仕組みが最盛期であり、生産者は常に増産を強いられ、それらは全て売れていた時期のことです。
一方、後者は「マーケティング2.0」とも呼ばれ、経済が成熟した中で、消費者の行動が変化し、消費者ニーズによりシビアになってきたことから、嗜好性の高い商品を提供しようという考え方です。高度成長期、バブル期を超えて市場は成熟し、消費者の求める価値も変化しています。そのため「プロダクト・アウト」よりも「マーケット・イン」が重要だと言われるようになってきました。
経営戦略例)生産者の顔が見える商品づくり
最近スーパーで販売されている野菜の中には、生産者の名前だけではなく顔写真付きで販売されるものも増えてきました。不思議に思っている方も多いかも知れません。しかしマーケティング手法として、「生産者の顔が見える」野菜は、顔が見えることで安心感が生まれ、人柄まで見えるようだと訴求効果があるのです。
食品は特に健康問題に直結することから、安全性や品質に対しての要求が高いと言えるでしょう。スーパーで野菜を買うとき、新鮮かどうかはもちろんのこと、産地を気にする方消費者も高いです。しかし、生産者の名前と笑顔の写真を見ることで潜在的に「安心できる」と感じ、商品を選んでもらいやすくなるのです。消費者は、産地もわからない野菜よりも、〇県□町の△さんが作っているオーガニック野菜の方が安心感を感じるわけです。これが付加価値につながる、新時代の農業経営の一つの肝となります。
経営戦略例)農作物のブランド化
自慢の野菜も農協を通して出荷してしまえば、他の生産者さんの野菜と一括りに同じ価格で販売されます。安定感を得たい一方、農家なら誰でも一度は「作った野菜をブランド化したい」と考えたことがあるのではないでしょうか。ブランド化というと難しそうですが、実際は個人でもブランド化は十分可能ですし、実店舗を構えなくてもインターネット上で販売するなど方法は色々あります。ここでは野菜のブランド化に欠かせない3つのポイントについて解説します。
- 地域性を活かした差別化
「京野菜」や「加賀野菜」のように、地域に対する愛着や理解という付加価値も望めます。
- 品質管理基準を設定し、品質保証マーク等を付ける
ブランド維持のために客観的な品質基準を、消費者が見て分かるような形で表示しましょう。
- ターゲット層の特定と販路開拓
「誰にどのように販売するのか」をしっかり見据え、販売戦略を立てることが重要になります。自分のブランドイメージに合うお店を探しましょう。
ますます経営戦略化が重要になる農業経営
2030年時点での農業従事者は、2020年の半分以下になることが予測されています。生産力を維持させるためには、農地集約やスマート農業の推進といった農業経営の効率化が不可欠です。農家の法人化、大型化が進む一方、最新技術を駆使することで家族経営の農家でも大規模農家並の生産性を実現できる可能性もあります。