農業用ドローン活躍の場が広がっている
ダイナミックな空撮映像や、災害現場での生存者確認、危険個所の点検やメンテナンスなど、さまざまな場面で活躍するドローン。実は農業でも幅広く、活躍します。具体的にどのような活用方法があるか、試験段階のもの、実用化しているものも含めて、見てみましょう。
・農薬や肥料の散布
農薬を入れたタンクを積載し、ノズルから散布します。肥料は粒剤の散布に用いられるのが一般的です。GPSなどで位置情報を正確に把握できるので、散布漏れや重複の心配もありません。中山間地域など、作業がしにくい場所での散布ができるため、生産者の負担軽減につながります。
・水田の播種
まだ試験段階です。種子が風にあおられて、想定とは違う場所にまかれないように、鉄粉でコーティングして、種子を重くする研究が行われています。
・ほ場センシング
ドローンによる空撮画像から、農作物の生育状況や害虫の発生状況などの情報収集をします。検知器・感知器・測定器といったセンサーを用いれば、温度・湿度や降水量、土壌の水分率、照度、風速などの数値化も可能です。精密農業で農作物の収量と品質向上につながります。
・害獣対策
赤外線カメラを駆使して、農作物に害を与える野生動物(害獣)の生態調査を行えば、対策につながります。また、ドローン自体が音やニオイを発して害獣を追い払うことも可能です。
・収穫物の運搬
まだ試験段階ですが、将来的には物流においてもドローンの活躍は期待されています。収穫物や農作業に必要な道具を運搬できれば、輸送時間の短縮や生産者の負担軽減につながります。
農業用ドローンを活用するメリットとは
農業にドローンを導入すると、以下のようなメリットがあると考えられます。
・コストパフォーマンスが良い
ドローンは軽量で扱いやすく、1人で持ち運んで、積み下ろしから飛行まで完結できます。動力源はバッテリーなので、早朝の作業でも騒音は気になりません。購入費用も、1,000万円以上かかる産業用ヘリコプターと比べて、数百万程度に収められます。年間の維持費を含めても、コスト削減が可能です。
・効率的に作業できる
ドローンは空中から農薬などを散布するため、人や重機が作業しにくい、勾配がある地形や中山間地域でも問題なく作業できます。作業時間も、1ヘクタール当たりを10分程度と人力よりもスピーディーです。
・高齢化への対応が可能
ドローンを活用できれば、高齢の生産者に代わって、農作業をしてくれます。タブレットなどで操作するのが基本で、ラジコンのように自由自在に動かすことができます。操作に免許は不要ですが、安全に飛行させるには、専門のスクールや講習会で習得しましょう。
購入前に検討しよう!農業用ドローンのデメリット
農業用ドローンは便利な反面、以下のようなデメリットも考えられるので、購入前に十分検討しましょう。
・コスト高になる可能性
ほ場の面積や、購入するドローンの性能によっては却ってコストが高くなる場合も考えられます。本体の購入費用だけでなく、維持費や定期点検代、修理費、保険代などランニング費用もかかります。一般的には7ヘクタール以上の広さでえあれば、ドローンを活用したほうがコストを抑えられるケースが多いようです。
・国土交通大臣への許可申請が必要
ドローンを飛ばすには、国土交通大臣への許可申請が必要です。許可申請は、ドローンの利用を開始する日から10開庁日前までに行う必要があります。手続き方法は、農林水産省の「無人航空機(無人ヘリコプター等)による農薬等の空中散布に関する情報」を参照しましょう。また、ドローンの飛行ルールなどは細かな取り決めがあるため、国土交通省の「航空法における無人航空機の一般的な飛行ルールについて」を確認してください。
・使用できる農薬が限定される
農業用ドローンで使用できる農薬の種類は限られているので、ドローンを導入する前に確認してください。今後、普及に伴って種類が増えていく可能性もあるので、定期的にチェックしておくと良いでしょう。
農業用ドローンを購入するなら補助金を利用しよう
農業用ドローンの導入を決めたら、補助金を活用しましょう。2019年に農林水産省はスマート農業の推進にあたり、「農業用ドローン普及計画」を策定しました。その取り組みのひとつとして、助成金を設置しています。どの助成金が対象となるのか、見てみましょう。
・小規模事業者持続化補助金
全国商工会連合会が実施する、小規模事業者向けの補助金です。小規模事業者などが持続的に発展できるよう、生産性向上にかかる経費の一部を最大3/4、200万円を上限に補助されます。
・事業再構築補助金
中小企業庁が実施する、個人事業主および中小企業向けの補助金です。企業活動の付加価値額の向上、賃上げにつながるような施策に対して支払われます。
・産地生産基盤パワーアップ事業
農林水産省が実施する、収益力強化に計画的に取り組んでいる生産者を対象とした補助金です。高性能な機械・施設の導入や栽培体系の転換などの施策に、上限1/2の補助金が出ます。
スマートな農業につながるドローンをどう活用する?
大規模な設備投資をしなくても、1台の農業用ドローンだけでさまざまな作業を効率化、精密化できます。ぜひ活用して農作物の収量アップ、品質向上につなげましょう。