農業ベンチャーとは
テクノロジーの進化に伴い、AIやIoTといった新しい技術が誕生している一方、日本の農業は衰退傾向にあります。日本の農業所得は1978年のピーク時は5.4兆円でしたが、2017年には3.8兆円と約30%も減少。さらに、2018年に農林水産省が発表した「農業就業人口及び基幹的農業従事者数」によると、農業従事者の平均年齢は66.6歳と高齢化が進み、その影響で耕作放棄地も増加するなど、担い手不足が深刻化しています。
これらの問題を解決に導くため、ITを駆使したビジネスを展開する「農業ベンチャー」に注目が集まっています。スマート農業に関するシステムを開発・提供する企業、ロボット収穫機を製作する企業、求人・雇用、資金調達のサポートを行う企業などビジネスの形はさまざまです。また農林水産省は、農林水産分野における企業に対する意識を高めることを目的とし、農林水産分野のイノベーションの創出を促すため、「日本ベンチャー大賞」に、農業ベンチャーを対象とした表彰制度を創設し、農林水産大臣賞の表彰をおこなっています。
農業ベンチャーが解決を目指す、現代農業の課題とは
農業の効率化を図る試みは、就業者の不足を解決すると期待される試みです。就業者の代わりになるものや農具の代わりになるロボットやIoT機器を用います。低コストで効率的に収穫量を増やすことを目的としています。
熟練農家のノウハウを可視化・分析する試みは、農業に従事する就業者の高齢化に伴い、引退や死亡などによるノウハウの消失を解決すると期待されています。農家は、環境の変化や作物の育ち方に対して、「勘」や「経験」や「個人の技術」に頼る部分が多いため後継者が育ちづらいという現状があります。それに対して、AIやIoT機器(センサー)により可視化と分析(学習)を行い、農業従事者の育成に役立てることを目的としています。
農業ベンチャーの実例
既に実用化されている、農業ベンチャーの実例には次のようなものがあります。
- 機械学習でレタスを識別し、収穫する「Vegebot」
多くの野菜は手で収穫されています。これを解消するため、英ケンブリッジ大学の研究チームが、機械学習を使ってレタスを収穫するロボットを開発しました。
- いちごの収穫作業を自動化するAIロボット
農業の人手不足解消のため、スペインの会社Agrobotが開発した24本の”腕”でいちごを収穫するロボット。画像処理装置のGPUがいちごの成熟具合を細かく判断し、一つひとつ丁寧に収穫します。
- ドローンでマングローブを自動植林
NASAの元エンジニアが設立したスタートアップ「BioCarbon Engineering」の農業用ドローンは、ミャンマーで1日に10万本の植林を行っています。
- 穀物や作物の状態を管理するスマホアプリ
ドイツのフラウンホーファー研究機構で開発されたスマホアプリ「HawkSpex®mobile」は、穀物や作物をスキャンするだけで、栄養素が十分に供給されているかどうかや、追加肥料が必要かどうかなどについて知ることができます。
農業ベンチャー実現のため、起業法や農業ビジネススクール、農業コンサルについて学ぼう
農業ベンチャーとして起業する方法として、農業周辺ビジネスに参入する方法があげられます。農業ビジネスというと一つ目にあげた農産物の生産をイメージする人が多いと思いますが、実際には多様性があります。例えば、マーケティング、商品企画、ブランド化戦略、インターネットによる宣伝などがこれにあたります。
また、起業希望者をサポートする「アグリイノベーション大学校」という学校があります。仕事を続けながら週末で農業を学びたい方へ向けて、農業の技術や経営に関しての知識・理解を深める、学びのプログラムを提供しています。農業コンサルも起業を希望する人たちの頼れるパートナーです。地域や農業者に応じた農業経営に関するアドバイスはもちろん、生産・販売・加工にいたるまで幅広い視点からアドバイスを行い支援します。
農業を取り巻く環境変化へ対応するために
テクノロジーの進化にともない、デジタル技術とは縁遠いと思われていた産業が、近年、続々とIT化しています。ITを駆使すれば、物流や販売経路の改良はもちろんのこと、各生産者が手塩にかけて育てた米や野菜の魅力を余すところなく消費者に伝え、ファンになってもらえるのも大きなメリットです。