農業の未来が変わる? AIを導入して作業の効率化を目指そう

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農業にAIを導入するとどんなことができるの?

車の自動運転やスマホの顔認証、音声アシスタント、はたまた画像生成など。生活のいたるところで活躍を見せているAIは、農業の分野でも応用されています。AIとは「Artificial Intelligence」の略で、日本語では「人工知能」と訳します。反復学習やデータ蓄積を踏まえ、あたかも人間のように感知・理解・行動・学習できる、多種多様なテクノロジーの集合体です。

では、農業にAIを導入すると、どんなことができるのでしょうか。AIが得意とするものは大きく分けて2種類です。1つ目は「作業の効率化」で、具体的にはドローンの自動運転による農薬散布や自動耕運ロボット、収穫ロボットなどです。2つ目は「データ収集・解析・予測」で、収穫時期の判断、病害虫の発生リスク予測、栽培モニタリングなどが挙げられます。

農業は予測のつかない自然環境を相手にしています。安定的に農産物を供給するには、生産者の長年の経験に基づく知見、技術、そして時には勘に頼らざるをえません。しかしAIがそれらを学習すれば、ヒトに代わって、より適格な農作業を実践できるようになるのです。

農業にAIを導入すると、新規就農者でもベテランと同じ生産体制を整えられる

高齢化に人手不足…現代農業の問題をAIが解決してくれるかもしれない

AIによる作業の効率化は、肉体労働の多い農業従事者にとっては朗報でしょう。しかしAIの導入は、単に便利になるだけではありません。現代農業が抱える、人手不足・後継者不足の問題も解決してくれるかもしれないのです。

2020年の農業従事者は136万3千人と、5年前に比べて22%減少しています。また、全体の70%は65歳以上が占め、49歳以下の若年層は11%と少ないのが現状です。このまま農業従事者が減少すれば、国内の農業は衰退が進み、生産高が減少するでしょう。食料自給率が課題として掲げられる中、ますます輸入食材への依存を高めてしまいます。

新規参入者が少ない原因に、農業につきまとう過酷な労働環境のイメージが挙げられます。しかしAIが導入されれば、炎天下での除草・収穫作業など、体への負担が多い実務はAIを搭載したマシンが代わりに行います。

さらにAIは、データ収集・解析をもとに作業を最適化できます。雑草が生えている箇所だけに除草剤を撒いたり、収穫量を予測して出荷量を調整したり。少ない労働力で、適時適切な対処ができます。経験が少ない新規就農者でもAIを駆使すれば、ベテランと同じ生産体制を整えることが可能です。品質向上、収益アップにもつながるでしょう。新規参入するハードルが下がるので、将来的な農業人口回復も見込めるかもしれません。

スマホひとつでAIを農業に導入できるアプリがある

スマホで簡単!病害虫・雑草を診断できるAIアプリも

AIについて話すと近未来的なイメージですが、既に農業用のスマホアプリが開発され、農業従事者の間で使用されています。2020年6月にリリースされた「レイミーのAI病害虫雑草診断」(開発:日本農薬株式会社)もそのひとつです。

このアプリでは、スマホで撮影した写真から、農作物に被害を及ぼす病害虫・雑草がなにかを診断できます。その方法は簡単で、病害虫なら姿や食害痕(食べた形跡)、雑草なら姿形を撮影して成長レベルを選択するだけ。診断結果ごとに、防除に有効な農薬を教えてくれます。ほかにも「カルテ式診断機能」では、撮影した写真とミニ図鑑の写真を比較しながら、自分自身で判断も可能です。病害虫や雑草の発生場所はマップ上に表示され、履歴として一定期間保存されるので、時間を置いて検証し、防除対策を練ることができます。

病害虫・雑草の識別や、それに伴った農薬の選別は、ベテランでも一苦労なもの。スマホアプリなら、特別な機器を購入しなくてもAIを農業に導入できます。都度、新たな機能がアップデートされていくので、経験値の少ない新規就農者にとって、力強いパートナーとなるでしょう。

AIを農業に普及させるために越えるべきハードル

これだけ便利なAIですが、実際はまだまだ農業分野への普及が進んでいません。では、AI農業の課題には一体どんなものがあるのでしょうか。

・導入コストがかかる

本格的にAIを導入するとなると、実務を行うロボットや機械など、多額の初期投資がかかります。また、農地に合ったシステムの構築や、AIの技術を活用できる人材の育成にも時間がかかるでしょう。そのうえ、費用対効果の見通しがつきづらいのも難点です。

・標準化しにくい

タテに長い日本の農業環境は、気候や土壌などの条件が多様です。天候の変化や病害虫の発生など、予期できない自然現象も多発します。データが多ければ多いほど、AIの学習能力は上がりますが、一方でシステムを標準化しにくくなるという問題も浮上します。

課題も多いAIによる農業。でも導入・普及のメリットはある

農業人口減少が危ぶまれる中、AIは希望の光となるでしょう。一企業や団体だけでは解決できない課題も多いため、AIの農業への導入・普及に向けて垣根を超えた情報共有など、協力体制が必要になるかもしれません。

 

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