亜熱帯気候だからこそ!サトウキビ栽培が沖縄農業に欠かせない
青空の下、風に揺られるサトウキビ畑は、沖縄の農業を象徴する風景のひとつです。温かい海に囲われる沖縄県は、亜熱帯気候で台風や干ばつに多く見舞われます。
ほかの農作物が育ちにくい環境で、強風や水不足にも耐えられるのがサトウキビです。サトウキビは、砂糖の原料です。糖分を含む茎部分を切りだし、絞りだした汁から糖蜜を分離して製糖します。地域で栽培から加工(製糖)まで完結できるので、保存が効く砂糖は離島からも輸送しやすいという利点があります。
県内の耕地面積の約5割をサトウキビが占めており、約7割の農家がサトウキビ栽培に携わっています。まさにサトウキビは地域経済を支えているといえます。
サトウキビの植え付けは3種類。違いは?
サトウキビは種ではなく、茎部分を苗にして畑に植え付けます。その方法は「春植え」、「夏植え」、そして「株出し」の3種類です。それぞれの違いを見てみましょう。
【春植え】
植え付け時期:1月中旬~3月下旬
栽培期間:1年
収穫時期:翌1月~3月
特徴:1年で収穫できるが、収穫量は少なめ
【夏植え】
植え付け時期:7月~9月下旬
栽培期間:1年半
収穫時期:翌12月~翌々3月
特徴:収穫量が多いが、収入を得るのは1年越しになる
【株出し】
植え付け時期:収穫後の根株から発芽させる(2~3年収穫可能)
栽培期間:1年
収穫時期:翌1月~3月
特徴:植え付け作業を省略でき、生長も速く、春植えより収穫量は多い
栽培方法によって必要な労働量、収穫量が変わるので、農家は春植え・夏植え・株出しをバランス良く使い分けています。収穫量が少ない春植えでも、早い時期、2月頃に植えると苗の生育が促進されます。収穫量が多くなり、台風による被害も少なくなると言われているので、早く収穫したいなら、春植えと株出しによる連作が適しているでしょう。ただし、連作が続くと土壌の栄養分が少なくなるので、畑を休ませるか、緑肥栽培による土づくりが必要です。
沖縄農業の定番!サトウキビ栽培方法とは
サトウキビ栽培はどのように行うのでしょうか。ここでは土づくりから、植え付け、中間管理、そして収穫までの流れを簡単に説明します。
【土づくり】
土づくりでは水ハケを良くするために、深く掘り、土の堅い層を細かく砕きます(砕土)。120~135センチ(機械収穫の場合は140センチ以上)幅の畝(うね)を立てて、肥料をまき、植え付けに備えます。
【植え付け】
苗は、芽が付いた節が2つある枝(25センチ程度の長さ)を用います。30センチ程度の深さに埋め、根元を土で覆うと、2~3週間で発芽します。
【中間管理】
サトウキビ栽培は、初期の管理がとても重要です。発芽後は適時追肥・除草・防虫対策を行い、茎が伸びたら根元に土を寄せて盛る「倍土」を行います。茎の長さが10センチ以上になったら1回目の、50~70センチになったら2回目の倍土を行うタイミングです。倍土は、台風時に苗を守るだけでなく、収穫できる茎の数を増やします。また、干ばつは作物に深刻なダメージを与えるので、早めのかん水を心掛けることが大切です。
【収穫】
11月中旬、花が咲き始めると、まもなく収穫時期です。サトウキビは気温が低くなるにつれ、茎中に糖分を蓄えます。どの品種も、糖度がピークに達するのは2~3月です。収穫は製糖工場の操業に合わせて、12月~翌年4月に行うのが一般的です。ハーベスタ(機械)もしくは人力で根株を残し、茎部分を収穫します。刈り取り後、サトウキビを放置しておくと品質が低下するので、収穫したらなるべく早く製糖します。
1日でも、1ヵ月でも!沖縄のサトウキビ畑で農業を体験してみよう
サトウキビの収穫を体験してみたい方は、1日農業体験ツアーがおすすめです。年中開催している農園もあり、旅行会社や専用サイトなどから予約できます。収穫したサトウキビの搾り汁を試飲したり、お土産に黒糖をもらえたり、子どもが喜ぶアクティビティもあるので、観光がてら参加してみると良いでしょう。
本格的に収穫を手伝いたい方は、 “援農隊”に参加してみませんか。援農隊は、人手が必要となる収穫時期に、宿舎に住まいながら農作業を手伝う応援隊で、日本全国から集まります。例えば波照間島(はてるまじま)では毎年12月から4月頃の期間、援農隊を募集しています。サトウキビ栽培に興味がある方にとって、島暮らしを楽しみながら、農業のノウハウを聞けるチャンスなので一石二鳥です。
サトウキビ畑に宿る、沖縄農家の想い
自然災害にも負けないサトウキビは、人の背丈を越えるほど生長します。これらを収穫するのは、かなりの重労働です。何気なく食していた砂糖も、サトウキビの収穫に参加すると違った味わいを感じるかもしれません。沖縄に訪れた際はぜひ体験してみてください。