気候の影響が強い沖縄の農業
沖縄の農業は、本土とは少し違います。他の都道府県では稲作が中心ですが、沖縄では畑作が中心です。これは沖縄と本土で、気象条件・地理的条件・歴史が違うという背景があります。
沖縄の気候は高温多湿で、年間を通して温暖な気候です。しかし台風が多く、7~9月をピークに年間で7~8個の台風が接近します。冬は北東の強い季節風の影響もあるでしょう。このような気候から農産物を守るため、沖縄では昔から防風林や石垣を作って来ました。
また、沖縄は日照りにも大きな影響を受けます。そのため最近では、農業用ダムを造ったり、スプリンクラーを取り付けたりという対策が行われています。沖縄には河川がほとんど存在しないので、雨水に頼らざるを得ず、水不足になりやすいのです。海から吹き付ける潮風による塩害も多いでしょう。
沖縄県の農業産出額は998億円です。その中でもサトウキビが161億円、葉タバコが43億円の産出額で、工芸農作物出額のほとんどを占めます。その他にも沖縄ではゴーヤ、マンゴーなどが生産されています。
沖縄の農産物
沖縄県で生産されるゴーヤは、今では全国の一般家庭でも親しまれている野菜です。国頭郡今帰仁村(くにがみぐんなきじんそん)、宮古島市、糸満市を中心に栽培されています。施設栽培により周年出荷され、近年では離島を中心に冬場の生産が増加しているでしょう。
マンゴーは亜熱帯地域の気候を活かし、沖縄全域で生産されています。沖縄県のマンゴー生産量は全国最多で、品種は「アーウィン」が主流です。国内のマンゴー栽培の歴史は120年以上と古く、沖縄県が最初の栽培地と言われています。
その他に沖縄ではタイモ、パイナップル、キク、バナナ、シークヮーサーなどが栽培されています。一年中温暖な気候の沖縄で生産される農産物は多種多様といえるでしょう。
沖縄の農家7割を占めるサトウキビ栽培
サトウキビは沖縄の文化や食に大きく関わっています。映画・音楽・ドラマなどでもサトウキビ畑はよくモチーフにされているので「沖縄=サトウキビ」というイメージのある人も多いのではないでしょうか。サトウキビは沖縄では「ウージ」宮古諸島では「ブーズ」八重山諸島では「シッチャ」と呼ばれています。
沖縄は度重なる台風や干ばつなどの影響があり、自然環境は厳しいです。しかし、サトウキビは他の農作物に比べて、水不足や強風に強いという特徴があります。そのため、サトウキビは沖縄にとって欠かすことの出来ない農産物なのです。2022年産のサトウキビは、生産量81万3853トンで前年比120%でした。台風による被害がなく、気候条件に恵まれたそうです。
沖縄の農家の約7割が、サトウキビを栽培しています。収穫時や製糖などを通して雇用機会を生み出すなど、農家経済だけでなく地域経済を支えているのです。サトウキビから作られる「沖縄産黒糖」は、沖縄の大自然から与えられたビタミンやミネラルが含まれています。まろやかでコクのある健康的な甘味料として、全国で人気があるでしょう。
沖縄の農業が抱える問題と取り組み
今年、本土復帰50年を迎えた沖縄県は、SDGsの視点を取り入れた新たな沖縄振興計画を決定しました。農林水産分野では、沖縄の気候を生かした持続可能な農林水産業の振興を目指します。
沖縄の農業には、いくつかの問題があります。まずは農業の担い手の高齢化が進んでいることです。沖縄の基幹的農業従事者の平均年齢は64.5歳、70歳以上の高齢者の占める割合は28.8%となっています。若い担い手の確保は急務といえるでしょう。
そして沖縄の厳しい自然環境においても、継続的に農業経営を安定させるための対策が必要です。台風被害の大きい沖縄では、台風による被害を軽減するための農地防風林の整備が重要でしょう。また、地下ダムなどのかんがい排水施設やほ場の整備を進めて行くことも大切です。
JAおきなわでは「農業者の所得増大、農業生産の拡大、地域の活性化」を目指しています。そのための取り組みとして、生産者の農業技術向上に向けた営農指導力強化、経営支援等を行っているでしょう。生産コストの低減をし、農作物の販売力強化も推し進めています。
沖縄の農業は亜熱帯気候を活かした豊かなもの
観光地として人気が高い沖縄。「国内旅行で行きたい場所ランキング」上位の常連でしょう。沖縄の農業は、亜熱帯気候を活かした豊かな農産物が特徴的です。本土で手に入るものも多いので、沖縄の農産物を使って料理してみるのも楽しいかもしれません。