12月から2月は日本酒の「寒造り」のピーク
1年で最も寒い12月から2月頃までを中心とする、冬場に酒を造ることを「寒造り」といいます。酒はもともと年間を通じて造られていました。古代日本では、人々は神々や祖先の霊を祀り、捧げ物として酒が造られ、神祭りの際にその場で飲み干されてきました。日本の気候は四季によって大きく変るため、春夏秋冬の季節に応じた醸造技術が生み出されました。
江戸時代の中ばになると、しぼったお酒をある程度腐らさずに貯蔵出来る技術が確立され、多くの酒蔵が、酒を造りやすく、酒質の向上が期待できる冬季の醸造を採用しました。さらに、米の凶作を理由に減醸令(酒造制限)や飲酒抑制などの政策が実施されたこともあり、酒造りは冬季に集中し、寒造りの技法が確立されました。寒造りの確立に伴い、冬の農閑期・漁閑期に酒屋へ出稼ぎする杜氏・蔵人が発生するようになりました。こうして次第に寒造りが主流となり今日に至っています。
日本酒造りに適したお米、酒米(酒造好適米)とは?
お酒造り用に特化したお米があることをご存知ですか?酒米、または酒造好適米といって、お酒造りに適した性質を持つお米の品種を指します。農林水産省の「農産物規格規程」で定められた「醸造用玄米」に分類されている品種が酒米にあたり、現在120を超える銘柄が登録されています。
酒米に求められるのは心白(しんぱく)の大きさ、精米時の砕けにくさ、「捌け」の良さ、破精込み(はぜこみ)のしやすさ、吸水のしやすさ、タンパク質含有率の低さなどの「醸造適性」。酒米は、これらの性質が高水準な、品種改良されたものになります。酒米は、飯米に比べてタンパク質や脂質が非常に少なく、粒が大きいという特徴があります。タンパク質は雑味の原因となり、脂質は香りの成分が立ち上る際の妨げになるからです。
また、精米の度合いも大きく違います。米の外側には糊紛層という組織があって、タンパク質や脂質が多く含まれているためです。そこで、米そのものが精米に耐えられるかということが重要になってきます。量や米質、環境条件にもよりますが、精米は時に一週間以上もかかる作業。そのため砕けにくい酒米が求められるのです。
日本酒造りがさかんな都道府県TOP10は?
全国に約1600カ所ある酒蔵は、どの都道府県に多いのでしょうか?
第1位:新潟県/89蔵
「淡麗辛口」で知られる、地酒王国新潟。日本酒消費量も日本一。
第2位:長野県/74蔵
日本酒造りに必要な諸条件と清らかな環境。銘柄も豊か。
第3位:兵庫県/69蔵
江戸時代からの清酒の一大生産地である、酒造りの歴史ある地。
第4位:福島県/63蔵
個性的な日本酒の名産地。地元の酒造好適米を使った酒も好評。
第5位:福岡県/58蔵
焼酎優勢の九州にありながら、全国有数の酒どころでもある。
第6位:山形県/51蔵
豪雪の山々が蓄えた雪からのピュアな地下水を使った美味な酒。
第7位:岐阜県/42蔵
長良川・飛騨川・木曽川などの伏流水に恵まれる。酒造好適米「ひだほまれ」も有名。
第7位:愛知県/42蔵
木曽三川や矢作川など清流の伏流水、酒造りに適した気候風土に恵まれる。
第7位:京都府/42蔵
1200年の歴史を誇る古都・京都と深い関わりを持つ。
第7位:広島県/42蔵
酒造好適米「八反錦」や「千本錦」の評価も高い。
今は「ひやおろし」の季節
日本酒は、冬季にまとめて製造されるのが一般的なスタイルです。冬にしぼりあがったばかりの新酒を除けば、酒蔵に貯蔵されている酒が、1年を通して徐々に出荷されていきます。
ひやおろしは、もともと、しぼった酒に「火入れ」という加熱処理を一度だけ施し、蔵のタンクに貯蔵しておき、熟成の深まった秋に蔵出ししていくという商品です。火入れは、通常出荷前に二度行われますが、ひやおろしには一度しか行われません。火入れされた酒は、酒質が安定しやすいのですが、あえて回数を減らすことで酒の熟成を進め、新酒の荒々しさとは異なる味わいを編み出しています。
日本酒は、火入れをしてあるのか、また、火入れ回数によっても呼び方が異なります。その点で見ると、ひやおろしは一度火入れをする酒、つまり「生詰」タイプの日本酒ということになります。明確な解禁日が設けられているわけではありませんが、一部、業界内では9月上旬に、ひやおろしを一斉解禁する動きも出ているようです。
秋は日本酒も美味しい時期!
熟成された秋の日本酒は、新酒のかどがとれて、丸みのある味わいになります。実は、しぼりたての荒々しさが落ち着いて、なめらかな口当たりを楽しめるこの時期が、日本酒の飲み頃とも言われています。また、秋の味覚とひやおろしは最高の相性。肌寒さを感じる夜には、燗酒をいただくのもいいですね。