農業高校の特徴とは
数年前、高校野球において金足農業高校旋風という現象が起こりました。私立強豪高校に立ち向かう金農ナインのひたむきな姿に、日本中が熱狂した夏となりましたが、では農業高校とは、一体どんな学校なのでしょうか?実はその実態を知る人は少ないのではないのでしょうか。
農業高校は、普通科と違って職業学科と呼ばます。国語や英語、数学などの一般教科だけでなく、「農業」に関する専門科目がそれらと並行してプログラムに組み込まれています。特に専門科目は、教室で授業を受けるだけではなく、より実践的な、実習や体験などの科目が普通高校に比べて多くなっています。農業とひとことに言っても、内容は多岐に渡ります。植物の園芸や、家畜などの動物に関する知識、そして食品の製造や加工、栄養に関する内容など、幅広く専門性に富んでいます。
農業高校は日本全国に約300校あります。生徒数は2016年時点の調査で約8万2千人で、男女比はほとんど同じです。近年は、女子生徒の割合が高くなりつつある傾向だそうです。学校の数は都道府県別ですと、2020年時点で北海道が最も多く、以下、熊本や愛媛、千葉などと続きます。
農業高校卒業後の進路とは
農業高校は就職に有利、と言われることがよくありますが、実際どうなのでしょうか。農業高校卒業後の進路は、大学や短大への進学、専門学校や職業訓練校などの就業に関する能力開発施設、そして就職の大きく3つに分かれます。卒業後には約半数は就職し、その割合は工業や商業など、他の専門高校と比べても高く、やはり就職しやすい環境だと言えるでしょう。
理由として、農業高校では、働くために必要になる知識や技術を専門的に学美、実践もしているため即戦力となりうることがまず挙げられるでしょう。また、さまざまな資格や検定、免許の取得が可能なため、就職に有利であることも一要因です。農業系の品評会やコンクールを目指して頑張っている生徒は、そうした活動の成果も就職する時に有利な材料になります。農業高校からの主な就職先は、以下のようになっています。
- 農業
- 畜産、酪農
- 食品、食品加工メーカー
- 小売店
- 建設、造園
- 農業外の民間企業
- 公務員
農業高校から国公立大学への進学も可能
普通科のカリキュラムと、農業高校のカリキュラムは全く違います。進学校では受験を意識した勉強をしますが、農業高校では牛や植物を育てたりなどの、フィールドワークの比重が非常に高くなっています。あくまで就職や就農には有利ですが、大学受験向けのカリキュラムではないため、一般入試で共通テストを受験し、合格することは少しハードルが高いと言えます。
しかし、農業高校の進路実績を見ると一定数の国立大学進学者がいます。どうしてなのでしょうか?これは、「指定校推薦」という枠があるためです。指定校制は、大学があらかじめ高校を指定して選抜するので、合格率はほぼ100%。各学校により、進学できる先の大学は異なるのでリサーチが必要ですが、受験生には合格率100%という条件はかなり魅力なはず。高校からの推薦をもらったからと言って、必ず合格するわけではない「一般公募制」とは全く違う推薦方法となっています。
農業高校在学中に海外留学することも可能
文部科学省が2013年度より開始した「トビタテ!留学JAPAN」は、日本の若者の海外留学への気運を醸成するための、官民協働の留学促進キャンペーンです。2020年度の第14期募集を最後に終了しましたが、コロナ前の水準に回復させることを目指しています。そこでトビタテは2023〜2027年度までの5年間で「次期トビタテ!留学JAPAN」を実施することとなりました。
この「次期トビタテ!留学JAPAN」の3つの事業の柱のひとつであるのが、「新・日本代表プログラム(奨学金)」。留学計画の内容により、以下の3つのコースから選び、応募することができます。
- イノベーターコース:自ら課題を設定し解決に向けて試行錯誤し、独自の構想力をもって既存の枠組みを超えた新たな価値を創造しようとする挑戦的な留学計画
- STEAMコース:日本及び世界の社会課題解決のための技術革新や新産業創出に貢献するSTEAM(Science, Technology, Engineering, Art, Mathematics)領域における留学計画
- ダイバーシティコース:派遣留学生の専門領域における課題解決に取り組む留学計画
農業高校で学べることは各学校によって大きく違う
農業高校では、幅広い分野の学習と実践の機会に恵まれます。卒業後の進路は、進学と就職どちらも選べますし、就職先もさまざまで、将来性があると言えます。カリキュラムは各高校によって違うため、入学前に学科やカリキュラム内容を十分調べる必要があります。