日本の農産物の輸出量が初の1兆円超え!
日本の農業は世界から見て、どのような立ち位置にあるのでしょうか。
2021年に農林水産物・食品輸出額は初めて1兆円を超え、前年比25.6%増の1兆2,385億円となりとなりました。1兆円超えは政府がひとつの目標とし続けて来た事です。
新型コロナウイルス感染拡大の影響が続く状況下でも、小売店やEC販売など、消費者のニーズに応えるために新しい販売経路への輸出を行った事が好調だった事に加え、輸出拡大に向けて政府が行ってきた様々な取り組みが功を奏した結果となります。
多くの品目で輸出額が増加しましたが、前年と比較して最も輸出額が増加したのがホタテ貝でした。2021年の輸出額は639億円と、前年の約2倍以上も増加しています。これは中国やアメリカで外食需要が回復したことに加え、アメリカで生産量が減少したこと、更に日本国内での主な生産地である北海道の生産量が増加したことなどが理由として挙げられます。日本のホタテ貝は世界的に見ても品質が高く、コロナ禍による自粛生活で美味しい物を食べたいという需要にピッタリだったのではないでしょうか。
日本が海外のマーケット開発の為に行うべき農業経営とは?
日本は季節の変化が大きく、その時期でないと最高の食材が摂れないものが数多くあります。それを差し引いても、日本の農作物は品質が高い事から、世界の高級レストランから強い支持と信頼を得てきました。正確で迅速な対応は日本の気質ならではという所でしょう。
しかし、その一方で「海外のニーズと日本の輸出作物が合っていない」という視点のズレも指摘されています。日本の高品質な農作物を輸出したいと思うあまりに、質は良いものの高価すぎて売れない、という現象が起きているのです。例えばリンゴの場合、現地でライバルとなるようなリンゴは日本の基準から見れば規格外となるような物も多いです。同じ規格外であれば、日本のリンゴの方が質が良いため、高品質で高価格のリンゴである必要はありません。
また、生食用の農産物の輸出にはどうしても限界があります。欧州の食生活に合う日本の農産物の輸出も考えていくべきでしょう。
世界と比較して日本の残留農薬基準が緩いというのは大きな勘違い!安心の為に厳しい基準をクリアしています。
日本だけでなく、世界中で「食の安全」に関する意識が高くなっている事は紛れもない事実です。その意識が高まるにつれ、「農薬=危険」というイメージも更に強くなりつつあります。特にグリホサート系残留農薬についての注目度は高く、国によって残留農薬基準が違う事から、日本の農薬との付き合い方について疑問視する声も上がっています。
しかし、日本の農薬残留基準値が甘いのかというと、そうではありません。
まず第一に、全ての農作物にはそれぞれ個別にADIと呼ばれる⼀⽇摂取許容量が定められています。これはその土地の食生活や体質、生産手段によって細かく定められており、一部の作物が他の国と比較して多いからといって、他国より基準値が甘いという事にはなりません。その地域で一般的な食材であれば当然ADIは低く、逆にあまり食べられない食材であれば高く設定されますし、人種的に強い・弱いという体質も大きく要因してきます。
場合によっては日本がグリホサート系除草剤の国際残留基準値に合わせる事もあり、日本の意識が世界と比較して低いという事はありません。
農業の「知的財産」とは?輸出量1兆円超えした今だからきちんと考えたい知識の流出のこと
農作物と「知的財産」という言葉、すぐに結びつきますか?実は、農作業にも知的財産権があります。私たちが今食べている野菜や果物をはじめとした様々な農作物は、その地域の気候、育てやすさ、そしてもちろん美味しさのために、栽培方法の改善と、品種改良を重ねて来ました。その結果、少しずつ着実に品質や収穫量を挙げてきた歴史があります。
その試行錯誤の結果生まれた農作物は、当然苦労してそこまで作り上げた農家のものであるべきです。
「知的財産」の保護は日本の今後の農業の課題の一つです。
近年、シャインマスカットやイチゴなどの、海外でも人気の高い品目が中国や韓国に流出し、日本産のものより安価で取引されるケースが見られるようになりました。韓国産のイチゴだけでも、年間200億円の損失が出ていると言われています。
日本の作物をもっと食べよう!
日本が海外に輸出している野菜や果物を普段あまり食べないという人もいるのではないでしょうか。日本人が日本の味を知っているという事ももちろん大きなアピールになります。この機会にまずは食べる事から始めてみませんか。