グリホサートを評価する国際的機関 (主に米国環境保護庁と食品安全委員会)
世界の専門家や規制機関がグリホサートに発がん性は無いと結論している他方で、世界保健機関 (WHO) の下部組織である国際がん研究機関 (IARC) が、2015年3月にグリホサートをグループ2A「ヒトに対しておそらく発がん性がある」に分類しています。世界の規制機関とIARC、両者で評価が一致していないのはなぜでしょうか。
理由の一つは、評価目的の違いにあるでしょう。米国環境保護庁(EPA) や食品安全委員会は、レギュラトリーサイエンスのリスク評価手法に則り、世界の規制機関はグリホサートの「リスク」を評価し、「発がん性は無い」と判断しています。一方で、IARCによる分類は、ヒトに対する発がん性の「ハザード」としての科学的根拠の強さを評価したものにすぎません。
また、EPAの評価では、IARCによるグリホサートの分類公表後の2018年に出版された、米国国立がん研究所が支援した農業従事者健康調査の結果も検討の対象としています。そのためEPAは、IARCによる評価よりもEPAによる評価が「より堅牢で、透明性が高い」とコメントしています。
各国際機関のグリホサートに対する見解
では実際に、国際的な規制機関と研究機関は、グリホサートの健康への影響をどのように考えているのでしょうか?
IARCの発表を受けて米国環境保護庁(EPA)、欧州食品安全機関(EFSA)、我が国の食品安全委員会を含む関係各国の規制当局は、今までに提出されたグリホサートの安全性試験データ及び関連文献を再度見直しました。その安全性について詳細に再調査した結果、種々の遺伝毒性試験およびラット・マウスを用いた長期発がん性試験の結果はいずれも陰性であり、発がん性を示唆する所見がみられないという結果となりました。そのことから、現時点では「グリホサートには発がん性や遺伝毒性は認められず、ラベル表示された適用方法で使用する限りは安全である」という見解で一致しています。またこれらの規制機関に限らず、世界の毒性学者も規制機関の判断を支持しています。世界の規制機関は科学的な事実に基づいて、中立・公正な判断をしています。
一般の慣行栽培農家のグリホサートに関するリアルな声
有機農法や自然農法など農業もいろんなジャンルがあります。有機農業は、耕地面積では全体の1%にも満たない小規模派で、農家個々の生産規模もとても小さいです。しかし、上手にSNSなどを使う彼らの発言は社会に拡散しやすい声質を持っています。
一方で、日本の食料算出の大半を担っている、一般の慣行栽培農家の声は全くと言っていいほど拡散されません。そもそも発言が取り上げられることもほとんどありません。実際グリホサートの問題一つ取っても、農業の現場では広く認知されて使われている反面、便利で安全という現場のリアルな声は消費者に届いていません。それどころか、グリホサートは、農薬デマのターゲットにされることも多いのです。間違った情報が世の中を席巻してしまうと、風評被害のせいで、農薬が使えなくなるリスクがあります。その結果、食料の安定供給が脅かされ、食の安心安全が崩れてしまいかねないのです。
一般家庭でも安心して使えるグリホサート系除草剤
グリホサートは成分名なので、農薬としての製品名はさまざま。日本でも100以上の製品が売られています。ホームセンターなどによく売ってありますので、気づかぬまま家の前の道などにグリホサートを便利に使っている方も実は少なくないでしょう。
日本では主に、果樹園の雑草を枯らしたり、水田で田植え準備のため、土を耕す「田起こし」の前や、畑で種蒔きをする前の雑草防除に用いられています。ラウンドアップというブランドの製品がもっとも有名で、ホームセンターなどで入手が可能。一般家庭でも手軽に除草ができるスグレモノです。
手で引き抜くと根が残るため、むしってもむしっても、すぐに生えてくるご自宅の雑草管理。長時間の作業で、虫刺され、熱中症、日焼け、腰の痛みなど、注意点も多いのが難点です。また自宅から離れた不動産の土地管理は、手入れを怠ると雑草に覆われ、害虫や獣害の温床になることも。このような状況に、グリホサート系除草剤が活躍します。
一般家庭でも製品ラベルの記載通りに使用すれば安全なグリホサート
グリホサート系除草剤は、農水省登録を取得済みです。各国の調査機関や国が、科学的データの裏付けで使用基準を定めていますので、人体や環境への安全性が確保されています。土に落ちた成分は、やがて最終的には微生物により炭酸ガスなどに分解され、その後消失します。