農業関係者だけでなく、全ての人にとって重要な「食の安全」、、、食の安全とは何を基準にして考えるべきなのか?

目次

農業の基本である「食の安全」の定義とは

近年、食の安全性を揺るがす事件や事故が大きな話題となっています。世界トップクラスの「食が安全な国」であった日本においても、食に対する信頼が見直される事態となっています。一方、誤解や思い込みや感情的な判断による、過剰反応も散見されます。このことから、食の安全性に関する正しい科学的な分析を伝えていくことの必要性が出てきました。

農薬と食品添加物は、しばしば食の安全性で話題の中心となります。それも、デメリットのみに注目が集まりがちなのがこの2つ。その役割や恩恵についてはなかなか語られず、誤解が多く流布していますが、実は安全で豊かな食生活を支えるためには不可欠な存在なのです。農薬と食品添加物から受ける、ともすれば忘れられがちな恩恵を抜きに食は語れません。ここでは、農薬と食品添加物の知られざる本当の役割についてご紹介していきます。

食の安全の基礎となる機関

食生活を取り巻く環境の変化を受け、平成15年に食品安全基本法が制定されました。食品安全委員会は「食品の安全性の確保に関するあらゆる措置は、国民の健康の保護が最も重要であるという基本的認識の下に講じられなければならない」を基本理念としており、以下のような仕組みで食の安全を守っています。

食の安全を守るためのリスク分析が徹底されている

食品の安全を守る仕組み(リスク分析)

  • リスク評価:食品に含まれるリスク要因の摂取によるヒトの健康に対するリスクを、危害要因の特性等を考慮しつつ、付随する不確実性を踏まえて、科学的に評価すること
  • リスク管理:全ての関係者と協議しながら、技術的な実行可能性、費用対効果、リスク評価結果等の様々な事項を考慮した上で、リスクを低減するために適切な政策・措置について、科学的な妥当性をもって検討・実施すること
  • リスクコミュニケーション:リスク分析の全過程において、リスクやリスクに関連する要因などについて、一般市民、行政、メディア、事業者、専門家といったそれぞれの立場から情報の共有や意見交換をすること

正しい情報を基に食の安全について考える

代表的な食の安全に関する「誤った情報」と、「本当の情報」を紹介します。

  • 誤った情報1:化学合成品より天然のもののが安全

天然材料を使用したものでも、化学的に合成されたものでも、同じ物質であれば毒性は同じ。「天然だから安心」というのは思い込みに過ぎません。

  • 誤った情報2:殺虫剤は人にも有害

殺虫剤や除草剤のほとんどは「虫や雑草は殺すけれど、人や動物には害がない」、選択性の高いものです。

  • 誤った情報3:農薬を使わない方が美味しい作物が穫れる

日本は、高温多湿で病害虫や雑草が発生しやすい環境。農薬なしで現在の生産水準を維持するのは困難です。農薬を使わない場合のお米の出荷金額は20〜40%、なんとリンゴは99%減少すると試算されています。

  • 誤った情報4:輸入食品などには農薬が残留している

残留農薬に関する「ポジティブリスト制度」が 2006年5月に導入され、残留基準設定のない農薬には、一律基準値 0.01ppmという厳しい基準値が適用されています。したがって、そういった食品が市場に出回ることはありません。

  • 誤った情報5:農薬は土壌にたまり、食物連鎖で濃縮される

農薬には登録制度があります。厳しい試験を通過し、安全性が確認されたものだけが農薬として登録されます。

残留農薬には「ポジティブリスト制度」が適用されている

農業に欠かせない農薬の安全性について

農薬は、ヒトへの安全性、環境への影響など様々な試験を受け、審査を受けて登録となります。登録されて始めて、製造や輸入、販売、使用することが出来ます。農薬は、食に強く結びついているがゆえに、さまざまな安全性評価試験や、環境への影響試験の実施が要求されます。

現在使われている農薬は、環境中や動植物体内で速やかに分解し、残留の心配のないものが農薬として登録されています。 したがって長期間分解しなかったり残留毒性のある農薬が出回ることはありません。 農薬の土壌中での残留については分解速度を調べ、半減期が180日以上のものは登録されません。こうして、農業に欠かせない農薬の安全性は守られています。

本当の食の安全を守るために私たちが心がけるべきこと

食品の安全性に関する情報が氾濫する中、私達一人ひとりが食品のリスクを正確に認知し、情報を自ら選別しながら、その情報に基づいた適切な判断をできるようになることが重要です。そのためには、普段から信頼できる機関のホームページなどで正しい情報を収集することが必要とされるでしょう。

 

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