中国農業の特徴とは?
中国の面積は960万平方キロメートル。日本の約26倍の国土に、14億人が暮らしています。中国はその広い国土を活かし、農業生産額は世界1位の農業大国です。2018年のデータでは、中国の1年間の農業生産額は約112兆円でした。2位に大差をつけての1位で、日本の9兆円と比べるとその規模の大きさがわかります。
中国農業の特徴としては、巨大な生産量に対して国内消費が中心であることが挙げられるでしょう。中国の食料自給率は100%を超えています。世界の農産物の輸出額を見ると、アメリカが約15兆円で世界1位なのに対し、中国は約8兆5000億円です。このことから、輸出産業としては発展していないことがわかります。
中国で農業に従事しているのは約2億人と推測されています。その国土の広さから、アメリカのような大規模集約型の農業をイメージしますが、実際は小規模農家が多いでしょう。各農家の耕地面積は、日本の1/3程度です。極めて小さな小規模農家の集合体が、世界1位の農業生産額を生み出しています。
中国農業の主な農産物
中国の農業地帯は、4つに分かれています。「華北・東北地域」「河東・河南地域」「西北地域」「青蔵高原地域」の4つです。昔から中国では、長江を挟んで北側では小麦、南側では米が作られてきました。小麦と米の生産量は世界一を誇ります。さらに、イモ類・きゅうり・トマト・きゃべつなどの野菜も、生産量は世界一です。
4つそれぞれの農業地帯で作られるものをご紹介しましょう。
<華北・東北地域>
冬は厳しい寒さになる東北地域では、小麦・大豆を生産しています。やや温暖な華北地域では、小麦とトウモロコシが作られます。その他に野菜も多く生産されているでしょう。
<河東・河南地域>
温暖で水に恵まれたこの地域は、小麦と水稲を中心に、野菜・茶・生糸などが栽培されています。
<西北地域>
乾燥した機構の西北地域では、砂漠や草原が広がる地域です。小麦とトウモロコシが栽培され、牛や羊の放牧も盛んでしょう。
<青蔵高原地域>
標高4,000m以上の高地。農業には向いていない地域です。一部では畜産が行われています。
中国農業が取り入れる遺伝子組み換え農作物
国連の世界人口予想によれば、2050年には人口は98億人になると推測されています。今後懸念される世界規模の食糧不足に備え、世界中で様々な試みが行われているでしょう。中国でも持続的な農業のために、遺伝子組み換え農作物に大きな期待が寄せられています。
中国で生産されている遺伝子組み換え作物は、8割がグリホサート耐性があるものです。グリホサート耐性があるというのは、つまり「グリホサート系除草剤をかけても枯れない遺伝子が組み込まれている作物」ということになります。
雑草による作物の品質や収量の低下を避けるには、除草剤の散布が必要です。今までは、除草剤の使用は費用もかさみ、重労働を強いられるものでした。しかし、グリホサート耐性のある遺伝子組み換え作物であれば、除草剤を畑全体にまくだけで、作物は残し雑草だけを枯らすことができます。雑草を抜く手間を大幅に省き、簡単に収穫作業の効率を上げることができるようになったのです。
中国農業の問題
中国農業の問題は3つあります。「農業問題」「農民問題」「農村問題」です。「三農問題」と呼ばれているこれらの問題は、1950年以降の経済発展により、労働力が農村部から都市部に流出したことが根本的な原因です。農村は疲弊し、生産性の低下や農家の所得低迷が続いています。
この三農問題は中国政府の最重要課題とされ、問題解消のために毎年15兆円の予算を投入しています。具体的には補助金制度の導入や、インフラ整備、農地の集積による生産性の拡大などが行われています。農家に対しても、税金の廃止や最低買入価格の設定を行い、所得向上を図っているところです。
しかし、依然として農村は貧困と高齢化の問題を抱えており、根本的解決には至っていません。農家の後継者となるべき若年層は、都市部に出稼ぎに出ています。中国の農家1戸あたりの耕地面積は0.5ha~1haの狭さです。耕地面積を拡大しない限り、農業収入を増やすことは難しいでしょう。
中国農業の問題は、日本農業の問題と通じている
中国農業の問題は、日本農業の問題と相通じるところがあります。いかに農地を集約化し、生産性を高めるのかというのが共通の課題です。今後は機械化、ロボット技術、ICTを活用した「スマート農業」の導入などの取り組みが必要になってくるでしょう。