世界最大の農業大国アメリカの農業の特徴とは

目次

アメリカの主な生産物とその輸出

アメリカは世界最大の農産物輸出国であり、また日本にとっては最大の農産物輸入国です。日本が輸入している穀物・大豆の8割はアメリカ産であり、米国農業の動向は日本にとってとても重要です。

アメリカにおける農業は、17世紀以降の開拓によって発達しはじめました。第二次世界大戦後は、世界最大の食料供給国として農産物輸出を増大させていきました。またその国土の広さを活かし、1農場あたりの農地面積が大きく、販売額が10万ドル以上の販売額のある農場が販売額の47.5%を占めています。

米国の貿易は、近年は中国との貿易が大きく伸びています。貿易収支は赤字額が増大していますが、農産物は米国にとって貴重な貿易黒字部門なのです。しかし近年は、農産物の輸入量が増大していて、農産物の貿易黒字は減少傾向にあるのも事実です。

主な輸出品目は、大豆、トウモロコシ、綿花、小麦、果実、鶏肉です。主な輸入品目としては、果実、野菜、ワイン、ビール、植物油脂、牛肉で挙げられます。

アメリカの農業の長所

「適地適作」という言葉をご存知ですか?これは、アメリカの農業の特徴をあらわす言葉で、その地域の自然条件に合った農作物を栽培するという方法です。この言葉を初めて聞いたという方もいるかも知れませんね。

アメリカでは殆どの場合、大型の機械を使って、広い面積を少ない労働力で耕作する大規模農業が行われています。また、農場一つあたりの「農地面積」が広く、「販売額」も多いのが特徴です。

北部の平原では「春小麦」の栽培が、南部の平原では「冬小麦」の栽培が盛んです。また、中西部や五大湖、アパラチア山脈周辺ではトウモロコシの栽培が盛んで、この地域は「コーンベルト」と呼ばれています。

アメリカの農家一戸辺りの農業用地は広大

一方、太平洋岸の地域の気候は地中海周辺のように温暖で、オレンジやオリーブ、ぶどうなどの生産が盛んです。南部では、衣料の原料として欠かせない「綿花」の栽培が盛んです。

アメリカの農業の短所:異常気象や人手不足

アメリカの農業は2017年、GDP(国内総生産)に1兆530億ドルを貢献しました。農業だけで、世界で16番目の経済大国(インドネシアより上!)という計算になります。

しかし、気候変動による異常気象、耕作可能地の減少、農業人口の減少・・・アメリカの農業も日本と同様の問題点を抱えています。

問題点の1つ目は、異常気象。農務省は、アメリカにおける作物の損失の90%は異常気象が関連していると見ています。中西部では爆弾低気圧の影響による洪水が頻発。西部では山火事が発生し、南部ではハリケーンによる大きな被害が出ているのです。この負のサイクルにより、ますます環境破壊が進行してしまう状況となっています。

アメリカの農業に壊滅的な被害をもたらすハリケーンが頻発している

問題点の2つ目は、アメリカには200万以上の農場があるが、農場や牧場で働く人の数は国の就業人口の1.3%に過ぎず、慢性的に人手不足であるという点。アメリカの農地は広大ですが、農場や牧場で働く人の数はたったの約260万人しかいません。1840年のアメリカでは、労働人口の約70%が農業に従事していたことを考えると、劇的な変化です。

農業に欠かせない除草剤までも標的にされてしまう、アメリカならではの訴訟ビジネス

「起訴大国」で知られるアメリカでは、訴訟の機会を狙う「訴訟ビジネス」と呼ばれるものが存在します。これは、100万人を超える弁護士の数(日本は3万数千人)と、「懲罰的賠償」という独自制度に起因しています。

まず、弁護士の数が圧倒的に多いため、仕事にありつくには訴訟の種を自ら掘り起こさなければなりません。また「懲罰的賠償」は、損害賠償請求訴訟において「加害者の行為が強い非難に値する」と認められる場合に、裁判所または陪審の裁量により、実際の損害の補填としての賠償に加えて上乗せして支払うことを命じることのできる賠償のことです。これにより、成功報酬が巨額になることも訴訟のビジネス化に拍車をかけています。巨額の和解金を狙って弁護士たちが訴訟の種を見つけるのがアメリカ式です。

実際とある事件の原告弁護士は、担当していたがん関連裁判が山場を超えたため、次の獲物を探しているときに「国際がん研究機関(IARC)」による「グリホサート系除草剤に発がん性がある」との報道を知り、製造元を相手取って裁判を起こすことを決めたと語っています。

日本とアメリカの農業の違い

アメリカは「世界の食料庫」の異名を持つ、世界有数の農業大国です。日本とは人口も国土面積も違うので、単純な比較は勿論できません。しかし、ほとんどの食べ物を輸入に頼る日本と、輸出も盛んなアメリカとの違いは明白です。我が国においても食料自給率を向上への取り組みの必要性が叫ばれています。

 

シェア