不耕起栽培とは
不耕起栽培とは、「作物を栽培する際に通常行われる耕耘や整地の行程を省略し、作物の刈り株、わらなどの作物残渣を田畑の表面に残した状態で次の作物を栽培する方法」と定義されています。不耕起栽培は耕起栽培に比べて、作業時間が短縮でき、省エネルギー的であるなどの長所があり、しかも畑地に生息するミミズ、ヤスデ、クモなどの土壌動物群集が豊かになります。いっぽう、初期生育の遅れや減収などの短所も指摘されています。
不耕起栽培で問題となるのが、雑草対策をどうするかとなります。これには世界では2つの流れがあり、大規模農業ではグリホサート系の除草剤で雑草を枯らして、作物は遺伝子技術で除草剤の対抗性作物へ転換するものです。このグリホサート系除草剤は、植物の葉や茎から吸収し、植物独自のアミノ酸を合成する代謝経路を阻害して植物を枯らすもので、人や動物に影響が少ないものです。
もう一つの雑草対策は、主に日本の一部の小規模農業や家庭菜園等で行っているもので、草の根を残したまま、草刈り機や手鎌で刈り取り、刈った草は、栽培作物の周囲にマルチとして敷いて、枯草による肥料と枯草の日がげによる雑草成長を抑える方法です。これは大変手間がかかりますので、小規模耕作に適したものと言えます。
アメリカで普及するグリホサート系除草剤を利用した不耕起栽培
日本にはもともと「不耕起」「無農薬」「無肥料」をベースとする「自然栽培」が存在しますが、一般的には「なかなか収量が安定しない」「初期の困難を乗り越えないとうまくいかない」という厳しいイメージが広がっていて、本格的な農業に応用するにはかなりハードルが高い印象があります。
一方アメリカの事情はかなり異なっており、アメリカ農務省によるとアメリカ国内ではすでに小麦や大豆の40パーセント以上、トウモロコシも30パーセント近くがグリホサートを活用した不耕起で栽培されているとの報告があり、不耕起栽培が定着しています。しかも、日本とは桁の違う何十万平米という農地を、遺伝子組み換え作物や除草剤との合わせ技で効率的に不耕起栽培するのが主流とのこと。つまり、日本のような「無農薬志向」の不耕起とはまるで別の視点で、トラクターの燃料費や作業コストの軽減、土壌侵食のリスク回避といったきわめて現実的なメリットのために不耕起が実践されています。
グリホサート系除草剤による手間省きが地球環境改善に貢献
世界中で安全性が確認されている農薬である、グリホサート系除草剤を使った作物の栽培が普及する以前の1990年代、雑草対策は基本的に耕起によって行われていました。当時は不耕起栽培や、最小限の耕起にとどめる栽培・管理方法は長期的に継続することができなかったためです。しかし、現在は耕起による雑草防除から、不耕起や耕起を最小限に抑えた方法に大きく移行しています。
さらに、グリホサート系除草剤の使用が土壌の炭素貯留量増加の理由であることが確認されました。脱炭素への取り組みにも貢献できるということです。不耕起と最小限の耕起の採用により、耕起から放出される炭素量は減少し、継続的な作物生産による炭素の隔離が増加していることが明らかになったのです。これにより農業の持続可能性の向上に必要な貢献をし、地球環境を改善していることが確認できます。
農耕地に使えるおすすめグリホサート系除草剤
ホームセンターなどの除草剤コーナーで手軽に入手でき、安全に使えるグリホサートを主成分にしている商品とその特性を合わせてご紹介します。
サンフーロン(大成農材)
サンフーロンの成分はグリホサートイソプロピルアミン塩です。安価に手に入れることができ、大変経済的です。
ラウンドアップ(日産化学)
人気№1の商品。他の除草剤と比べ雨や朝露にも強いラウンドアップ。梅雨の時期でも安心して使用できます。
ネコソギロングシャワーV8(レインボー薬品)
成分はグリホサートイソプロピルアミン塩です。シャワーヘッドが付属し、噴霧器などを使わずとも、希釈せずにそのまますぐに使用できる液剤があります。
サンダーボルト 007(日本農薬)
移行性のあるグリホサートに、接触型のピラフルフェンエチルを混合した、速効力と持続力を合わせもつ非選択性茎葉処理型除草剤です。ツユクサ類やヒルガオ類への効果が補強されています。
便利で環境保全にも貢献
科学技術の発達によって、作物や土壌のしくみについて、多くの情報が蓄積されてきました。常に人為の影響を受ける畑地においても、生きものが育む豊かな生態系が形成されることで持続性のある安定した農業が成立します。