グリホサートの発がん性について
科学的なリスク評価機関として設立されたドイツ連邦リスク評価研究所(BfR)では、リスク削減を目的として、消費者の健康保護と食品の安全性に関するリスク評価、科学的助言を行い、食品、飼料、製品の安全性について報告し、政府や民間企業に指針を提供しています。ドイツの政府の科学当局であるが、独立した機関です。
BfRのグリホサートについてのよくある質問から発がん性について引用します。
グリホサートはヒトに対して発がん性がある可能性があるか?
BfRは、WHO国際がん研究機関(IARC)のグリホサート・モノグラフを含め、これまでに入手したすべての研究、文書、出版物を検討した結果、現在の科学的知識に基づけば、意図した目的に適切な方法で使用すればグリホサートからヒトへの発がん性リスクは予測されないという結論に達しました。一つの例外(スウェーデン)を除き、EU加盟国の専門家と最近発表されたESFA結論も、植物保護製品の活性物質としてのグリホサートの更新承認に向けたEU活性物質審査の進行手順において、この評価を支持しています。
グリホサートに発がん性があると言われている背景
2015年3月、国際がん研究機関(IARC)がグリホサートをグループ2A(おそらくヒトに対して発がん性がある)に分類したことことによります。
しかしBfRも含めて、各国の安全性評価機関はグリホサート 発がん性を否定しています。
ではなぜIARCだけ評価が異なるのでしょうか。
IARCによる分類は、IARC自身が述べているように、ヒトに対する発がん性の「ハザード」としての科学的根拠の強さを評価したものにすぎません 。そのため、IARCの分類では、赤肉、夜間勤務、熱い飲み物などが、グリホサートと同等にグループ2A「ヒトに対しておそらく発がん性がある」に分類されています。
例えば、IARCによるグリホサートのハザード評価においては、公表された論文または公表予定のデータの一部のみを検討の対象にしています。
しかし、各国の安全性評価機関は、このような科学論文に加え、厳しい条件の定めのあるGLP (優良試験所基準) に準拠した多くの毒性試験の結果も含めて評価を行った上で、グリホサート 発がん性を否定しています。
米国環境保護庁 (EPA)によるIARCとの評価の違いについて
EPAはIARCとの評価の違いについて以下のように説明しています。
EPAのがん評価は、IARCによる評価より堅牢なものである。IARCの評価では、一般に入手可能な科学誌に発表された、または発表に向けて受理されたデータのみを検討している。その結果、IARCは、EPAが評価対象とした研究の一部のみを検討するに留まっている。例えば、IARCは動物を対象とした発がん性試験として8件のみを検討したが、EPAでは基準に見合う発がん性試験として15件を評価に使用した。EPAはまた、IARCが評価に使用した研究のうち、非哺乳類 (すなわち、線虫、魚類、爬虫類、植物) の研究など、グリサホートのヒトに対する発がん性の判定には不適切な研究のいくつかを除外した。
また、EPAのグリホサートに関するがん評価は、透明性もより高いものである。EPAは、外部のピアレビューを受けるべく、がん評価案を連邦殺虫剤・殺菌剤・殺鼠剤法 (FIFRA) の科学諮問委員会 (Scientific Advisory Panel, SAP) に提示した。SAPによる評価プロセスの一環として、EPAはグリホサートの発がん性に関するパブリックコメントを求め、寄せられたコメントは協議事項や会議録、会議メモ、SAPの最終報告書とともに、きちんと文書化されている。EPAはSAPの報告書に回答し、委員会の勧告に対処し、また、従来のがん評価に改定を加え、透明性を保つべく広く公開した。さらに2018年2月には、EPAは、グリホサートのヒトの健康への影響および環境リスクに関する全面的な評価についてもパブリックコメントを求めた。これとは対照的に、IARCの会議は公開されていない。IARCの審議内容は非公開であり、そのプロセスにおいてパブリックコメントを受け付けて検討することはなく、会議に先立って提供される資料もなく、また、IARCの報告書は外部のピアレビューを経ずに最終版となる。
引用:
https://www.regulations.gov/document/EPA-HQ-OPP-2009-0361-2344
世界中の安全性評価機関が安全性を評価
世界中の安全性評価機関がグリホサートに発がん性は無くグリホサートは安全であると認めています。
グリホサート 除草剤は、40年以上に渡って世界中で使用されています。
日本食品安全委員会を含む主要国の規制機関は、すべての農薬と同様グリホサート イソプロピルアミン塩に関する最新の安全性データを常に調査やモニタリングをしており、グリホサートに発がん性がないこと、グリホサート 除草剤は表示どおりに使用される限り安全であると、繰り返し結論づけています。
日本食品安全委員会
神経毒性、発がん性、繁殖能に対する影響、催奇形性及び遺伝毒性は認められなかった (2016年3月)
米国環境保護庁 (EPA)
EPAは、グリホサートが現行のラベルの指示に従って使用された場合、ヒトの健康へのリスクはなく、グリホサート 発がん性はないと結論した (2020年1月)
欧州食品安全機関 (EFSA)
EFSAは、グリホサートがヒトに対する発がん性を有する可能性は低く、EU規則の下でグリホサートを発がん性物質として分類する科学的根拠は無いと結論した (2015年11月)
FAO/WHO合同残留農薬専門家会議 (JMPR)
本会議は、食事からのグリホサート暴露で、グリホサートがヒトに対して発がん性リスクを及ぼす可能性は低いとの結論に至った (2016年5月)
他にも欧州化学物質庁 (ECHA)、カナダ保健省病害虫管理規制局(PMRA),
オーストラリア農業・動物用医薬品局(APVMA)も同様の見解を示しています。