グリホサートは発がん性があるから危険?その噂の因果関係と背景について
世界中で使われており、その安全性が保証されているグリホサート。人間や生態系に影響を及ぼさないといわれているグリホサートですが、その安全性について、近年世界中で議論されています。発がん性があり、私たちの健康に障害をもたらすのではと主張されていますが、その主張の背景を追ってみましょう。
発端は、2015年にIARC (国際がん研究機関)がグリホサートを検証する為の委員会にて、グリホサートを「クラス 2A(ヒトに対して恐らく発がん性がある)」に分類したことから端を発しています。(同じクラス2Aに分類されているものに、赤肉・夜間勤務・65度を超える熱い飲料などがあります)
そのクラス分けに加え、学校の校庭整備で使われたグリホサートが要因で悪性リンパ腫を発症したと主張した裁判で、販売会社のモンサントに損害賠償金2億8,900万ドルの支払いが命じられました。この裁判はその後、モンサントを買収したバイエルが責任や不正行為を認めないまま、和解が成立しています。
グリホサートの安全性について論議される「ハザード」と「リスク」とは
グリホサートの安全性について挙がる議論の中で、「ハザード」と「リスク」という言葉がよく出てきます。グリホサートの安全性についてクラス 2Aに分類したIARCですが、それで安易に発がん性があると結論づける前に、「ハザード」と「リスク」の考え方について理解しておきましょう。
「ハザード」とは、健康に悪影響をもたらす原因になる可能性がある食品や、その食品中の物質の事を指します。例えば、カドミウムやダイオキシン、有害微生物などがこれに含まれます。
それに対し、「リスク」とはハザードが含まれている食品を摂取した結果、生じる健康への悪影響が起きる可能性やそのレベルを指します。例えば、ハザードが含まれている食品であっても、微量であったり、頻度が少ない食品であれば、レベルは低くなります。そのため、ハザードレベルは高くても、リスクのレベルは低い、という事が当然起こります。
IARCの「ハザード」に基づく分類分けはがん予防には不適切
IARCはグリホサートを「恐らく発がん性がある」としてクラス 2Aに分類しましたが、この考えは「ハザード」に基づいてのものです。リスクに基づいて決定していないため、このクラス分けはがん予防の適切なリスクマネジメントには不適切で、時代遅れとなっています。
リスク管理は効能や期間、頻度、経路などを考慮した上で行っており、「何もしない」「個人用保護具の使用」「個人曝露量の低減」「使用制限」「極端な状況での使用禁止」など様々な方法が取られています。
それに対し、IARCが行っている分類分けは単にその物質に発がん性があるか、ないかです。毎日食べるものなのか、たまに少量食べるものなのか、そういった実際の危険性についてのものではありません。例えば、バナナの皮で滑って転ぶ、という事は現実にはほぼ起こりませんが、確かに危険性はあるものです。その「バナナの皮」と「車」が同じ危険度クラスになっていたらそれは正しい分類分けと言えるでしょうか。
IARC発がん性がある、とクラス分けされたものに対し不安になるのは当然ですが、実際のリスクに基づいておらず、いたずらに不安を招く原因となってしまっています。
グリホサートが検出されたパンを食べた場合の「リスク」は?
実際によく食べる小麦製品、パンを例に取って考えてみましょう。グリホサート系農薬を使用した小麦で作ったパンから1kg当たり0.05mg〜1.1㎎グリホサートが検出され、安全性について疑問の声が上がりました。「ハザード」にてクラス 2Aに分類されているグリホサートが検出されたパンを食べた場合の「リスク」はあるのでしょうか?
農薬として登録されている成分はADIと呼ばれる一日摂取許容量が厳しい規定で定められています。このADIは毎日、一生涯、食べ続けたとしても健康に害がない量の事です。
グリホサートの場合、ADIは1mg/kg体重と日本は定めており、体重50kgの大人なら一日50㎎となります。
最も多い1kg当たり1.1㎎の検出量で考えた場合、大人なら1日で約50kg、体重15kgの子供は1日で約15kg以上のパンを毎日食べ続けないとADIに達しません。
一日でそんな量のパンを食べる事なんて、現実的ではありませんよね。グリホサートが検出されたパンを食べる「リスク」は非常に低くなります。
安心した食生活を送ろう!
発がん性がある、と聞いたら不安になるのは当たり前の事です。ですがグリホサートのリスクは非常に低く、心配する必要はありません。安心して美味しい食生活を楽しんでください!