オートミールはなぜ健康にいいのか
最近TVやオンラインで話題の健康食品、オートミール。オートミールは全粒穀物が原材料で、食物繊維やミネラルが豊富です。 しかしネット上には、オートミールにはグリホサートなどの残留農薬が含有されていて、発がん性などの健康上の懸念が残るという意見も散見されます。
オートミールには食物繊維は玄米の約3倍も含まれていて、便秘解消や善玉菌の繁殖促進による腸内環境の改善が期待できます。食物繊維のなかでも、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維がバランスよく含まれているところもポイントです。さらに水溶性食物繊維のβ-グルカンが糖の吸収をおだやかにするため、血糖値の急上昇を抑える効果にも注目が集まっています。このようにいい事づくめのように見えるオートミールですが、本当に残留農薬による発がん性はあるのでしょうか?
オートミールの残留農薬に関する噂が日本でも話題に。
試しに「オートミール」「健康」のキーワードで検索してみると、多くの人が様々な調理法でこの健康食材を日常の食事に取り入れている様子が見てとれます。
ではキーワードを「オートミール」「発がん性」に変えて検索してみるとどうでしょうか?やはりたくさんの人がこのトピックについても大きな関心を寄せていることがわかります。主に「オートミールの残留農薬」について心配する人が多く、中でも特に「グリホサート」の残留と発がん性の関連について知りたいと思う人が多いようです。多くの記事でこの懸念については否定されていますが、一度ネット上で広まった風評はなかなか消えません。それだけではなく、悪意のある形で何らかのムーブメントに利用されるケースも残念ながら多く存在します。
オートミールだけじゃない!小麦議論にも利用されるグリホサート
実は同様の懸念は小麦と小麦製品に関しても多く取り沙汰されていますが、多くの研究機関や公的機関がこの懸念は杞憂であると反論しています。では、「残留グリホサートには発がん性がある」という風評はなぜ広まったのでしょうか?
発端はいくつかあります。その一つとして、グリホサートが反GM(遺伝子組み換え)団体のターゲットにされたことが挙げられるでしょう。遺伝子組換えに反対しているフランスのセラリーニ教授が2012年に発表した、グリホサートを主成分とする農薬がラットの乳がんを増やすという論文が多くのメディアがこれを報道して不安が広がりました。しかし実際にこの論文の根拠とされた研究はサンプル数が少なく、ほとんど根も歯もない内容でした。世界中の多くの研究機関によって、グリホサートには発がん性がないことが確認されています。
もう一つはIARC(国際がん研究機関)が2015年にラウンドアップをグループ2Aに分類したこと。グループ2Aは「ヒトに対しておそらく発がん性がある」ものを指しますが、同じグループに分類されるのは「赤肉や理容・美容労働、熱い飲み物」など。これはグリホサートに発がん性はないという、これまでの多くの研究結果とは違った結論であったため、世界の多くの研究者が間違いを指摘しました。
内外の専門家によるオートミールの評価
日本の食品安全委員会は2016年にラウンドアップに発がん性はないと判断・発表していますし、他の多くの国でも同様の結論となっています。日本での代表的な風評記事として、鈴木宣弘氏が東洋経済ONLINEに寄稿した「『リスクのある小麦』の輸入を続ける日本の末路」という記事が挙げられます。しかし鈴木氏と掲載誌は読者からの事実誤認ではないかという指摘を認め、現在同記事の小見出し「自国民が食べないもの」は「日本産にないリスクのある食べ物」などに変更されています。
では海外の専門家はどのようにこの問題を見ているのでしょうか。米国、ニューヨーク州の医師であるキース博士は次のように述べています。
「環境保護庁は安全な残留レベルを30ppmと設定しており、それを下回る場合は安全であると見なされます。環境ワーキンググループによる2018年の調査では、オートミールに含まれるグリホサートのレベルは0.5〜1ppmであることがわかりました。
これらの穀物の消費が重大な健康上のリスクを引き起こす可能性は低いです。残留量は非常に少量であり、また一部の専門家は検査に用いられる検出方法自体に疑問を呈しています。」