グリホサート残留食品より「有機栽培」が安全!とは言い切れない理由

目次

「有機栽培=ヒトに安全」ではない? あくまで環境保全のための栽培方法

誰でも「食の安全」は気になるもの。グリホサート系除草剤などの農薬を使用している農産物より、「有機栽培(オーガニック)」や「無農薬栽培」のほうが、ヒトには安全だと考える人は多いでしょう。果たして本当にそうでしょうか。

日本で「有機栽培」は、化学合成した肥料・農薬、遺伝子組み換技術を使用しない、“環境への負荷をできる限り低減した”農業生産方法と定義されています。有機農業推進法上、有機農薬ならば使用規制がなく、栽培時に使っていても同じ「有機農産物」として店頭に並びます。また、国内生産品でも輸入品でも、有機農産物として出荷・販売する際は、「JAS規格」の検査に合格しなければいけません。しかし、この検査でも“ヒトへの影響”について触れていないのです。

また「無農薬栽培」は、文字通り、農薬を使わない栽培方法を指します。有機栽培のように第三者機関による認証制度がなく、あくまで自己申告です。栽培中に農薬を使用していなければ「無農薬栽培」になります。しかし、土壌に農薬が残留したまま栽培するケース、栽培期間外に除草剤などで農薬を使用するケースなどあるかもしれません。そこで消費者に対して誤解が生じないよう、2007年に「特別栽培農産物に係る表示ガイドライン」が設けられ、安易に「無農薬」と表記して販売することは禁止されました。

以上のことから、「有機栽培」や「無農薬栽培」だから、ヒトには安全ということは決して言い切れないのです。

グリホサートで問題視された“発がん性”は赤身肉や夜間勤務と同等レベルだった

グリホサートを含む農薬に関して正しい情報収集が大切

一般的に流通している農産物のほとんどは、農薬を使用しています。そこで気になるのが安全性です。2015年にグリホサート系除草剤は、国際がん研究機関(以下、IARC)によって「おそらく発がん性がある」と評価され、話題となりました。

しかしフタを開けてみると、IARCの評価でグリホサートは、赤身肉、夜間勤務、65℃以上の非常に熱い飲み物と同じグループに分類されています。確かに熱い飲み物を飲むと火傷します。でも冷ませばいいだけのこと。同じようにグリホサートも、曝露しないように使用上の注意点を守っていれば、安全です。つまり、あくまでIARCは“発がん”の有害性があるという、科学的根拠を示しただけに過ぎません。

アメリカ合衆国環境保護庁、欧州食品安全機関など、世界の主要な国々と地域は、グリホサートは「健康被害が起こるリスクは低い」という見解を示しています。日本でもグリホサートの毒性実験が行われ、食品安全委員会による「農薬評価書 グリホサート」にて「発がん性は認められない」と結論付けました。もちろん「ラベル表示された適用方法で使用する限りは安全」としています。

農薬を説く記事は多くありますが、デマ、もしくは曲解しているものもあります。正しい情報収集が、自身を守る最善の手と言えるでしょう。

グリホサートは一日許容摂取量内であれば健康に被害なし

農薬を直接飲むことはなくても、農産物に残留した農薬がヒトの体内に入ることはあります。この残留農薬は、ヒトにどのような影響を与えるのでしょうか。結論を先に言うと、内閣府食品安全委員会が定めた「一日摂取許容量(ADI)」内の摂取であれば、健康に影響はありません。

ADIは、残留農薬を毎日一生涯にわたって摂取し続けても健康への悪影響がないと推定される一日当たりの摂取量です。動物を用いた毒性試験結果などの科学的根拠に基づき、食品健康影響評価(リスク評価)を行い、設定されました。グリホサートのADIは、体重1kgに対して1mgと設定されています。体重50kgの人であれば50mgです。

そして農産物などの食品に対しては、各農薬の「残留基準値」を設定しています。残留基準値は、人が摂取しても安全と評価した量の範囲で設定されていて、「ppm」という百万分率で示されます。例えば値が高い、30ppmの小麦であれば1kgに対して30mgが許容範囲です。

日本人の食生活の変化や状況、国際情勢に合わせて各食品の残留基準値は変化しますが、トータルでADIの上限を超えることがないように調整されています。そのため、私たちが残留農薬で健康を害する可能性は極めて低いでしょう。

残留基準値を超えた食品が出回らないように国や自治体が逐一検査をしている

グリホサートの残留基準値は、自治体がしっかり管理している

基本的に、日本に住む私たちが残留基準値を超えた食品を食べることはありません。なぜなら、国内で使用可能な農薬すべてに残留基準値を設定し、かつ食品衛生法で、残留基準値を超えた食品の販売・輸入を禁止しているからです。また、ただ禁止をするのではなく、違反しているものがないか、自治体や国が日々検査を行ってチェックしています。

国内に流通する食品は、製造・加工施設で、または市場などの流通拠点で、抜き取り検査をしています。国内で違反が確認された場合には、その食品を廃棄させたり、原因究明や再発防止を指導したり、その措置内容は厳格です。また、輸入食品の場合は、輸入時に検疫所へ届け出されたものの中から、モニタリング検査を行っています。違反が確認されると、その食品が輸入される都度検査を行うなど、検査の頻度を高めることもあります。このように、国や自治体のチェック体制が整っているので、基本的に残留基準値を超えた食品を食べることはないと言えるでしょう。

正しい情報収集を心掛けて、なにがヒトに安全か見極めよう

有機栽培や無農薬栽培は聞こえが良くても、あくまで環境への負荷を少なくするための栽培方法です。その点、グリホサートなどの農薬は、ヒトへの影響について議論されています。きちんと法で規制されている分、安全と言うことができるのではないでしょうか。

 

シェア