不耕起栽培から見みる「土の力」

目次

不耕起栽培の土壌へのメリット

 

不耕起栽培とは、「作物を栽培する際に通常行われる耕耘や整地の行程を省略し、作物の刈り株、わらなどの作物残渣を田畑の表面に残した状態で次の作物を栽培する方法」と定義されています。

 

刈り取った株をそのままにするため、土の中に根が残るのですが、それにより保水性が高まります。養分が土壌から流出する可能性が減り、作物にとって最適な土壌環境を保つことができます。

 

起栽培に比べて、作業時間が短縮でき、省エネルギーであるなどのメリットがあります。

作物残渣などの有機物が土壌表面に集積され、有機物に富んだ層が形成されます。

有機物の層は、土壌生物の餌であり住みかとなり、多種多様な土壌生物が増加します。

 

不耕起栽培の特徴の一つに、刈り取った後の株やわらをそのまま土壌表面に残すことが挙げられます。これらの有機物は、土壌に棲む生物達の餌となります。

有機物はミミズや微生物などの土壌生物によって分解され、彼らの排泄物や生成物によって土の団粒化が進むので、人為的に土壌の養分調整をする必要がなく、作物に必要な養分の調整を土壌が行ってくれる土壌環境になります。

 

耕起することの目的とデメリット

 

除草草を枯らすための耕起を行うこともありますが、有機物や肥料が土壌とかき混ぜられ、土壌微生物と有機物や肥料の接触面が増加することで、養分の無機化が促進されますし、

物理的な土壌環境が破壊され、そこに生息する微生物が阻害されることが研究で分かっています。ミミズのような土壌動物も破壊されてしまいます。

 

耕起をすることで、土壌の水分は蒸発し、土壌表面の養分がなくなり、化学肥料の大量投入を必要とし、その肥料余剰分が大気放出や川や海に流れることになります。

そして、土壌表面が乾燥化して砂漠化の進展も懸念されます。

グリホサート 除草剤
グリホサート 除草剤

土壌生物への影響が最小限のグリホサート

 

不耕起栽培で問題となる雑草の防除には除草剤を利用します。

グリホサート 除草剤に接触した雑草のみに有効に働くことで、作物に除草剤の影響を与えないので、安全上有効な手段として、グリホサート 除草剤が利用されています。

 

グリホサート系除草剤は、植物の葉や茎から吸収し、植物独自のアミノ酸を合成する代謝経路を阻害して植物を枯らすもので、人や動物に影響が少ないものです。

 

米国環境保護庁(EPA)はグリホサート 成分には発がん性がなく、比較的毒性が低いと見なしています。

収穫予定の作物に散布するわけではなく、散布後は土壌で微生物により分解されるので残留しないため、毒性の懸念はさらに限定されます。

土壌生物への有害な影響は、耕作による明らかな影響に比べれば小さいと言えます。

グリホサート 除草剤
グリホサート 除草剤

不耕起栽培と耕起栽培、どちらが「自然」なものか

私たちは「化学的」なものよりも「自然」なものを好みますが、以上を踏まえてどう感じますか。

グリホサート 除草剤を使わずに耕起による雑草防除をして化学肥料を大量に投入する必要がある耕起栽培と、土壌微生物による豊かな土壌環境で育てる不耕起栽培と、どちらが望ましい農業なのでしょうか。

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